気候変動が米国経済に及ぼす影響について新たに評価した結果、気温が1℃上昇するごとに平均で郡内総生産の1.2%に相当するコストがかかることが示唆された。重要なのは、南部の地域は経済的損害を被る危険性がかなり高いのに対して、太平洋岸北西部およびニューイングランド地方はわずかに経済的利益を得る可能性があるという点である。こうしたシナリオでは、北や西へ向かって価値の大きな移動が起こり、経済的不平等に拍車がかかることになる。米国における気候変動のコストを定量化するため、Solomon Hsiangらはモデルを開発し、6つの主要な経済的要素(農業生産高や労働供給など)について、1981~2010年における短期的気候変動の影響をとらえたデータをまとめた。彼らはこのデータを用いて、「business-as-usual(対策を講じない)」場合における気候変動予測に基づき、今後の経済的影響を見積もった。当然のことながら、大西洋岸沿いの郡はサイクロンの激化や海面上昇によって被る損害が最大になると予想される。全体的に見ると、南部や中西部の住民が最大の損失を被ると予測され、その額が郡内総生産(GCP)の20%を超える場合もある一方で、北部や西部の住民はわずかに利益を得る可能性があり、その額が最大10%になる場合もある。モデルの予測によると、平均の農業生産高は約9%減少するという。また死者数の増加率は、気温が1℃上昇するごとに10万人あたりの死者が約5.4人増加するという。著者らはこのモデルがもつ数多くの不確実性について論じ、気候変動自体の不確実性のせいで予測に大きなばらつきが生じることに言及している。関連するインタビュー動画では、Hsiangが「我々が示したのは、米国のどの地域経済が特に脆弱かということであり、これは政策立案に役立つだろう。適応していくには、どこに的を絞るべきかを知ることが必要だ」と述べている。これらの研究結果は、William A. PizerによるPerspectiveでも取り上げられている。報道関係者の方々へ:各郡で予測される経済的損害は、http://globalpolicy.science/econ-damage-climate-change-usaでご覧いただけます。パスワードは「embargoed17」です。
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