Arctic Animal Movement Archive(北極圏の動物の動きに関する研究データアーカイブ:AAMA)―― 新しい生態学的データセットで、30年間にわたる北極圏全域での動物の追跡調査を備えている ―― は、急速に変化する北極圏について理解を深めるための強力な新しいツールである。研究者らは新しい報告で、そのオープンソースのデータアーカイブを紹介し、それを使って、現在進行している気候変動に起因する北極圏の局所もしくは全域での動物の行動と生態の変化の初期兆候を特定するために生態学的「ビッグデータ」をどう使用できるかを示している。地球上で気候と環境が最も急速に変化しているのが北極圏であることは広く知られている。そのような急変は北極圏に生息する種の適応能力に対抗するものであるため、北極圏の今後を予測するにはそれらの種がどう反応しているかを知ることが最も重要である。しかし、北極圏は広大で遠く、調査は難しい。変化を記録するには栄養段階を網羅した北極圏全域にわたる長期的なデータが必要である。多数の機関がこの数十年間に北極圏全域で動物追跡研究を実施し、変化する動態の評価に役立つ方法を提示したが、多くの場合そのデータは単一の種に注目したもので、互換性がなく、見つけてアクセスするのは難しい。こういった問題からSarah Davidsonらは、AAMAの開発を思いついた。これはこの30年にわたって共同で収集され現在も拡大し続けている動物追跡データセット集で、北極圏とその周辺地域での陸生および海洋動物の動きが記録されている。Davidsonらによると、このデータセットには、96種の数百万のデータポイントが含まれており、公開されている発見データとプロジェクト特定の未公開もしくは極秘データへのアクセス権をサポートしているという。この新しい生態学的ツールを紹介すべく、DavidsonらはAAMAに基づいた複数の事例研究を評価し、イヌワシの移動とカリブーの繁殖の時期における気候変動、および、温暖化に反応した動物の動きにおける種独自の変化を実証した。
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