News Release

プレート上の抗菌耐性の進化

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

抗菌薬の存在下で突然変異していく細菌の進化を追跡する大きな培養装置が開発された。その装置によって、意外にも、抗菌薬の濃度がより高い環境に入りこむ可能性がいちばん高いのは、もっとも環境に適した(つまりもっとも耐性の高い)変異株というわけではないことが明らかになった。むしろ、培養プレート上でもっとも耐性が高い変異株の「後方」にいた細菌が、最高濃度の抗菌薬のなかで生存できるようになったのである。今回の結果は、世界中のヒトの健康を脅かす現象のひとつ、細菌が抗菌薬に打ち勝つようになるという進化のパターンと機序について、重要な洞察を提供している。空間と時間を介した抗菌薬耐性の発生について理解を深めるために、Michael BaymらはMEGAプレート(microbial evolution growth arena[微生物の進化と増殖のアリーナ]プレート)と呼ばれる装置を開発した。この装置は、大きな長方形のペトリ皿で、濃度の異なる抗菌薬(今回はトリメトプリムとシプロフロキサシンが用いられた)を加えられるようになっている。細菌はプレート上の1ヵ所で培養されたが、リソースを求めて競争が高まると、ほかの場所へ拡散した。さまざまな濃度の抗菌薬を用いることで、Michael Baymらは変異細菌の耐性をどんどん高めて拡散を可能にする変異のマップを精密に描きだすことができた。いずれの抗菌薬を用いた試験でも、細菌は抗菌薬がまったく含まれない環境から最高濃度の状態へ直接適応することはできなかった。これは、細菌が耐性を進化させるためには中等度の濃度への曝露が不可欠であることを示している。耐性を高める変異は増殖を減少させるという犠牲を払って生じることが多く、その後、相補的な新たな変異によって増殖数が回復することをMichael Baymらは見出した。興味深いのは、細菌種の空間的な位置が耐性の発生成功にある種の役割を果たしていることである。たとえば、閉じこめられた変異株(耐性を得て“適応”している親株より後方にいる株)を培地の「最前線」に移動させたところ、それらは最前線にもともといた細菌が増殖できなかった新たな場所で増殖することができた。この結果を考慮して、著者らは細菌集団の適応性はもっとも耐性が高い変異株によってではなく、どちらかといえば充分に耐性を有し、かつ前線に充分近い場所で発生した変異株によって促進されることを示唆している。関連するPerspectiveでLuke McNallyとSam Brownが説明しているとおり、今回開発されたMEGAプレート装置は、「時間および空間を介した(細菌の)進化を視覚化する画期的な」装置で、これを用いれば薬剤耐性の進化を新たな面から探究することができるであろう。

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