研究者らは、自己免疫疾患を引き起こす機能不全を示す免疫系の要素を特異的に標的とし殺滅する一方、依然として体を守っている健康な免疫細胞には作用しないT細胞を作製できるようになった。一部の自己免疫疾患は、特定の病原体のシグネチャーに反応するB細胞のサブセットが、間違えて本人の組織を異物であると見なし、残りの免疫系にそれを攻撃するよう促す時に発生する。現在、自己免疫疾患を治療するための戦略として、患者を感染症にかかり易くさせてしまう全面的な免疫抑制が行われている。また、患者は再発をきたすことが多い。今回、Christoph Ellebrechtらによるマウスの研究の早期結果から、より標的を絞ったアプローチが自己免疫疾患の治療に有効となり得る可能性が示されている。最近、白血病の治療に成功が示された技術にヒントを得て、研究者らはキメラ抗原受容体(CAR)を用いて不良なB細胞を標的とする方法を探索した。CAR技術は、免疫応答を誘発する抗体を採取して、これを、病原体を殺滅するT細胞と融合させるというものである。この技術を少し変更することで、研究者らは特定の病原体、すなわち自己免疫疾患の場合であれば異常なB細胞を標的とする一群のT細胞を作製することができた。尋常性天疱瘡(PV)は生命を脅かす自己免疫疾患で、皮膚に水ぶくれをきたす。そこで研究者らは、疾患を引き起こすB細胞が認識する、鍵となるタンパク質であるDsg3を採取し、T細胞を活性化させるシグナル伝達タンパク質にこれを融合させた。研究者らが作製したT細胞をマウスに注射したところ、マウスにおいてDsg3を標的とするB細胞の濃度が低下し、水ぶくれの発現が減少した。さらに、作製されたT細胞は分裂・増殖し、PVを、またおそらく他の自己免疫疾患を治療するためのCAR技術は、長期的に持続する効果を発揮し得ることが示唆された。
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