News Release

インドネシア原産の樹木「メリンジョ」種子抽出物が肥満や糖尿病を改善

善玉物質アディポネクチンを活性化させるメカニズム

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

Mechanisms of MSE and their beneficial effects

image: Mechanism by which MSE promotes the expression of DsbA-L in the living body, increases the amount of activated adiponectin, and improves obesity and diabetes symptoms view more 

Credit: Associate Professor Tsuyoshi Shuto

東南アジアではインドネシア原産の樹木「メリンジョ」の実や花、葉が伝統的によく食べられています。熊本大学の研究者らは、メリンジョ種子抽出物が、善玉物質アディポネクチンの活性化を促進し、肥満や糖尿病病態を改善するメカニズムを明らかにしました。遺伝子の型の違いが効果の違いに関与していることもわかりました。

インドネシア原産の樹木「メリンジョ」は、実や花及び葉が古くから食料として利用されています。中でも、メリンジョの実には高い抗酸化作用、抗菌作用があり、主な成分としてレスベラトロール等のポリフェノール類が多く含まれていることが知られています。また、メリンジョ種子抽出物に多く含まれるレスベラトロールの一種である「グネチンC」は、一般的なレスベラトロールよりも、高い薬理活性 (抗酸化作用) と体内滞留性 (長く作用し続ける力) を有することが知られています。

一方、レスベラトロールは古くから健康に良いとされ、脂肪細胞から産生される善玉因子アディポネクチンを誘導することが報告されており、この作用により、メタボリックシンドローム等の生活習慣病を改善する作用があることが知られていました。しかし、メリンジョ種子抽出物がアディポネクチンを誘導する詳しいメカニズムは分かっていませんでした。

熊本大学のグローバル天然物科学研究センターでは、世界各地の有用植物や天然物の成分単離・同定と薬理活性評価を行っています。熊本大学の鬼木助教らは、これまでのヒトの遺伝子解析研究により、DsbA-L (Disulfide-bond-A oxidoreductase-like protein) 遺伝子の型の違いがアディポネクチンの多量体化(活性化)に影響を与えることを見出し、すなわち、DsbA-Lの誘導が、アディポネクチンの活性化を促し、メタボリックシンドローム等の生活習慣病を改善する作用を有する可能性を示してきました。そこで、鬼木助教らは、ヒトや動物においてメリンジョ種子抽出物が、1) DsbA-Lの働きを高めるのか、また、2)アディポネクチンの活性化 (多量体化) を促進するのか、さらには、3) 肥満・糖尿病治療効果を発揮するのか、について明らかにするための調査を行いました。

まず、鬼木助教らは、健康成人男性42名を対象に、メリンジョ種子抽出物を14日間服用する試験(二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験)を実施しました。その結果、メリンジョ種子抽出物を1日300 mg服用することにより、生体内のアディポネクチンが活性化 (多量体化) されることを示しました。さらに、その効果は各個人が持つDsbA-L遺伝子の型の違い(G/G、G/T、T/T)によって異なり、遺伝子の発現量が低いとされるG/T又はT/T遺伝子型保有者で、効果が大きいことを示しました。

上記のヒト臨床試験の結果を受け、首藤准教授らは、メリンジョ種子抽出物を高脂肪食負荷マウス (肥満誘導性糖尿病モデルマウス) に投与し、各組織におけるDsbA-Lの発現や血中アディポネクチン 量などに与える影響を検討しました。その結果、メリンジョ種子抽出物の連日経口投与 (4週間) は、生体内のDsbA-Lの発現や活性化アディポネクチンの量を増加させ、主に筋肉組織における糖尿病病態を改善することで、蓄積脂肪量や空腹時血糖値の上昇などの糖尿病症状を有意に改善することを明らかにしました。

以上のヒト及びマウスを用いた検討から、メリンジョ種子抽出物 (MSE) は、生体内のDsbA-Lの発現を促進し、活性化アディポネクチンの量を増加させ、特にマウスにおいては肥満や糖尿病症状の改善作用を有することが明らかになりました。

研究を担当した首藤准教授は次のようにコメントしています。

「本研究の成果により、今後、メリンジョ種子抽出物を介したDsbA-L遺伝子の誘導促進作用に注目することで、人々の健康増進や肥満・糖尿病治療への応用が期待されます。私たちは植物などの天然資源から革新的な医薬品や健康社会づくりに役立つ産物を生み出し、新興国の天然資源の有益性に科学的エビデンスを与えて創薬や健康促進に活用することで、世界の幸せに貢献したいと思っており、今回の研究成果もその一つです。」

本研究成果は、科学ジャーナル「Scientific Reports」に2020年3月9日に掲載されました。

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[Source]

Oniki, K., Kawakami, T., Nakashima, A., Miyata, K., Watanabe, T., Fujikawa, H., ... Shuto, T. (2020). Melinjo seed extract increases adiponectin multimerization in physiological and pathological conditions. Scientific Reports, 10(1). doi:10.1038/s41598-020-61148-2


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