新しい2つの研究報告によると、植物プランクトンの発生量と性質が劇的に変化しており、過剰炭素の吸収・蓄積に重大な影響を与えているという。2つの研究をまとめると、炭素を多く蓄積するタイプの藻類が現在繁茂しており、炭素ポンプとしてますます大きな役割を果たすようになることが示唆されたことになる。Kelton McMahonらは、深海の軟質サンゴの骨格に棲む植物プランクトンについてアミノ酸の同位体特性を調べ、過去1000年間に北太平洋で変化してきたプランクトンの支配の歴史を解明した。彼らの分析によって、窒素固定を行わないシアノバクテリアから真核微細藻類へ支配は移行し、産業革命の初めごろ、窒素固定を強力に行うシアノバクテリア群集へさらに移行したことが明らかになった。2つの移行期には著しい違いがあり、最初の移行は600年以上かかったが、より最近に起こった2度目の移行は200年もかからなかったことがわかった。こうした細菌のなかには非常に効果的な炭素ポンプの働きをして、大気中から二酸化炭素を取り除くものもあるので、著者らは、窒素固定を行なうシアノバクテリアの増加傾向がこのまま続けば、炭素ポンプの効果はさらに高まり、ますます大量の二酸化炭素が大気中から取り除かれる可能性があると示唆している。
Sara Rivero-Calleらによるもうひとつの研究によると、北大西洋では、炭酸カルシウムに覆われた藻類(円石藻類)が、1965~2010年の間に2~20%以上も劇的に増加しているという。分析によって、そのおもな原因は二酸化炭素濃度と大西洋数十年規模振動(AMO)であることが示唆された。彼らはプラクトンの調査データと、20以上の生物学的・物理的要因を考慮したモデルとを併用した。その結果、円石藻類増加と二酸化炭素増加との間に明らかな関連性を見出し、AMOパターンと藻類増加との間には二次的な関連性を見出した。McMahonらの研究と同様に、この劇的な増加が見られたのは植物プランクトンの1グループであり、このグループは表面の鱗片に炭素を取り入れて炭素循環に重要な役割を果たしている。
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