"プリンテッドエレクトロニクス"はフレキシブル基盤上に安価に電子装置を製作できるため、電子装置の応用範囲を大きく広げる技術として期待されている。しかし、現在の導電インクの低性能と高価格のために、プリンテッドエレクトロニクスは広い応用に至っていない。
豊橋技術科学大学と米国Duke大学の研究者らは、安価で高い酸化耐性を有する導電インクの主原料となりうる新規銅合金ナノ粒子の合成方法を新たに開発した。研究者らは、弱い還元剤(ビタミンC)を含む水中で、電気的に金属細線を爆発させてナノ粒子を得た。その粒子を用いて作製した導電ラインの導電性劣化過程は、厳しい環境下(高温、高湿度下)において測定された。
「我々は"ワイヤーエクスプロージョン法"を用いた新規金属ナノ粒子の合成に関して研究を行ってきました。その中で、得られたいくつかの新規銅合金ナノ粒子が高い酸化耐性と低い電気抵抗率を示すことを発見しました。」と河村剛助教は話す。「さらに、低環境負荷で低コストな手法で合成されるこれらのナノ粒子は、きわめて安価に供給できるメリットを有します。」
結果として、1%の錫、5%の銀、5または30%のニッケルと合金化された銅ナノ粒子は、銅単体のナノ粒子と同等の導電率を有しながら、85�C、85%相対湿度の厳しい環境下においても、24時間後に高い導電率を維持していた。さらなる導電率と酸化耐性の向上が達成されれば、ワイヤーエクスプロージョン法で合成される銅合金ナノ粒子が、安価で高性能な導電インクの作製に利用され、プリンテッドエレクトロニクスの広い応用に繋がると期待される。研究者らは、今回のワイヤーエクスプロージョン法と液相化学反応を組み合わせた新しいナノ粒子合成法が、組成や表面化学状態の制御された新規ナノ粒子の合成を目指す研究にも寄与できると期待している。
Journal
Scientific Reports