新たな研究により、アカゲザルの社会的地位は免疫系の性質に影響を及ぼしうることが示された。社会的地位が低くなると、炎症誘発性応答が大きくなるという。この結果は、社会的地位は健康上の不平等を引き起こすことが知られているヒトにおいても、重要な同様の影響を示唆しうる。健康上の不平等は、資源や健康リスク行動の差から生じうるが、ヒトと似た社会構造を有する動物種に関する複数の研究では、生物学的レベルでも健康上の不平等が引き起こされている可能性を示唆している。さらに手がかりを得るために、Noah Snyder-Macklerらは、社会的階層がすでに確立している1群に新たなメンバーを加え、檻内の雌のマカク45匹の社会的地位を操作した。「地位が高い」雌は社会的地位が低い雌と比べてある種のT細胞の濃度が高く、とくにウイルス感染に対しすばやく反応するナチュラルキラー細胞の濃度が高かった。著者らが低い社会的地位はグルーミングが少ないという事実で補正をしたとき、免疫関連遺伝子発現の形成において、肯定的な社会的相互作用の不足は社会的従属から生じるストレスと同等またはより重要であるかもしれないことを見出した。次に、研究者らはペトリ皿で、それらのサルから採取した血液検体に細菌感染の状態を再現し、免疫応答を解析した。そして、社会的地位の低い雌の免疫応答では、細菌感染に応答する炎症誘発性サイトカインの産生が有意に多くなることを見出した。したがって、マカクにおいて、社会的従属は抗菌反応を促進するいっぽうで、高い社会的地位は抗ウイルス反応を促進するようである。関連するPerspectiveではRobert M. Sapolskyが、これらの結果がいかに人間の社会経済的地位と健康上の不平等と関連するかについて考察している。
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