ヒト感染対照試験(controlled human challenge study)により、デングワクチン候補が、弱毒化したデングウイルスを意図的に感染させた健常ボランティアを完全に保護できたことが示された。このタイプの試験は、デング熱に関しては初めて行われたものであり、費用がかかりリスクがあることも多いデング熱流行地域での大規模試験を行う前に、デングワクチン候補をスクリーニングするために役立つツールとなりうる。したがって、ヒト感染試験は、デングワクチン開発とデザイン作成の迅速化に役立つと考えられる。デング熱は、世界で最もよくみられる蚊媒介性のウイルス感染症であり、年間3億9000万人が感染している。このウイルスは通常は症状がないか軽い発熱しか引き起こさないが、毎年200万人以上が生命を脅かすデングショック症候群を発症している。現在、いくつかの候補ワクチンの臨床試験が行われている。デングワクチンが臨床で使用されるまでの道のりは特に困難である。デングワクチンは、動物で有望な結果が得られても、ヒトで防御効果があることを証明できないことが多いためである。最大のハードルの1つは、デングワクチンが有効となるためにはデングウイルス4つの血清型すべてに対して防御効果を示さなければならないという事実である。過去に1つの血清型に感染したヒトは、別の血清型に感染したときにより重度の疾患症状を呈する。したがって、部分的にしか有効でないワクチンはヒトの重度デング熱のリスクを高める可能性がある。
最近第II相試験が完了したTV003と呼ばれる生弱毒化デングワクチンの防御効果を評価するため、Beth Kirkpatrickらは、ヒト感染モデル(human challenge model)(マラリアワクチンの研究に使用されたモデル)で無作為化対照試験を行った。過去にデング熱に曝露されていない健常者41例に、ワクチンまたはプラセボを1回投与し、6ヵ月後、被験者に弱毒化したデング熱血清型2ウイルス(予防が最も困難な血清型)を感染させた。プラセボ群の20例が発疹と白血球数減少などの軽度の症状を発症したのに対し、ワクチン接種群の全21例が症状を発症せず、完全に感染から保護された。ワクチンの有効性を確立できるのは高度な臨床試験のみであるが、ヒト感染試験は、有望なワクチン候補を明らかにするために役立ち、有望でないワクチン候補が大規模な試験に進まないようにできると考えられる。この結果は、今年の早い時期にデング熱流行地域での第III相試験に進む予定であるTV003のさらなる評価を支持している。
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Journal
Science Translational Medicine