新たな分析の結果から、ドーパミンニューロンの活動が、ヒトの時間の判断に重要な役割を果たしており、ヒトの脳が時間を認識するよう作られているという、大きく疑問視されている理論が覆された。時間間隔を正確に推定する能力は可変的であり、いくつかの因子、例えば動機付けや注意力、情動などに依存している。中脳に存在するドーパミン(DA)ニューロンは、これまではこの複雑なプロセスの調節因子として関与するとされてきたが、DAニューロンが伝達するシグナルと時間認識能力との間の直接的な関係は考えられていなかった。さらに、時間認識行動を中断させる現在の複数の研究では一貫しない結果が示されている。ある場合にはDA放出速度の上昇によって主観的な時間感覚が速まり、別の場合には時間間隔が遅くなったり、変化しないこともある。時間推定能力におけるDAの関与を解明するため、Sofia Soaresらはマウスに時間課題(timed task)を実行させてDA活性を追跡した。マウスに2つの可聴音を聞かせて、2音の間隔を「より短い」と「より長い」に分類するよう訓練した。Soaresらは、2回目の音のみの場合に音と同時にマウスのDAニューロンに突然の活動(bursts of activity)を認めた。これは、直後の報酬に対するマウスの期待を反映しており、併せて音の発生タイミングに対するマウスの驚きを示している。著者らは、DAニューロンの一過性の活性化または阻害は、それぞれ時間の推定を遅らせたり速めたりするのに十分であることを発見した。関連するPerspectiveでPatrick SimenとMatthew Matellは、脳がDAシグナルを亢進または低下させる微調整は、これまでの実験における結果の矛盾を解明し、また行動の形成に関与するDAの新たな機能を同定する上で重要であることが示されるであろう、と強調している。
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