神経細胞内で物質は小胞にパッキングされ、分子モーターによって輸送されます。人手不足による宅配便の停滞が社会問題であるのと同様に、私たちの体内でも分子モーターの障害による小胞の輸送停滞はアルツハイマー病などの神経疾患の原因になります。東北大学大学院工学研究科の林久美子助教、東北大学学際科学フロンティア研究所の丹羽伸介助教らは、細胞を傷つけない非侵襲力測定法を用いて、生きている線虫内で小胞(シナプスの材料)に働く力を見積もることに成功しました。その結果、お神輿を大勢で運ぶように、1つの小胞を複数の分子モーターが協同で運ぶこと、運び手である分子モーターの減少が輸送力を弱め、シナプス形成の異常に繋がることを突き止めました。非侵襲力測定法は神経疾患研究の新しいツールとして期待されています。
この成果は2018年1月19日16時(日本時間)以降に英国王立化学会が発行する学術誌PCCP(Physical Chemistry Chemical Physics)のオンライン版で公開されます。
論文情報
"Non-invasive force measurement reveals the number of active kinesins on a synaptic vesicle precursor in axonal transport regulated by ARL-8"
Authors:
Kumiko Hayashi*, Shin Hasegawa, Takashi Sagawa, Sohei Tasaki and Shinsuke Niwa*
タイトル:
ARL-8が制御するシナプス小胞前駆体輸送のキネシン分子数:非侵襲力測定法の応用
著者名:林久美子、長谷川慎、佐川貴志、田崎創平、丹羽伸介
掲載誌:Physical Chemistry Chemical Physics
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Journal
Physical Chemistry Chemical Physics