News Release

世界初、カルボン酸からハロゲン化合物を不斉合成

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

image: This image shows the decarboxylative chlorination of β-keto carboxylic acids. view more 

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豊橋技術科学大学の柴富一孝准教授,博士後期課程1年の北原一利さんらの研究グループは、カルボン酸からキラルな塩素化合物を不斉合成することに世界で初めて成功しました。同反応により従来合成が困難であった“キラルクロロケトン”を簡便に高純度で合成することが可能になりました。本研究では生理活性物質合成への応用方法も示されていることから,同手法の医農薬品開発への応用が期待されています。

複雑な構造を有する機能性分子の開発において、これらを精密に合成する技術は不可欠です。中でも医薬品の合成においては,キラル分子の望みとする鏡像異性体のみを高い純度で合成する技術(不斉合成)が必要とされます。生理活性物質の多くは双方の鏡像異性体の薬理活性が異なるため,不要な異性体が混入していると副作用等が懸念されるためです。

キラルハロケトンは医薬品の有用な合成中間体として知られていますが,この化合物を触媒的に不斉合成する手法はほとんど報告されていませんでした。柴富准教授らはカルボン酸をハロゲン原子に変換する脱炭酸的ハロゲン化反応に着目しました。この反応は約150年前に発見された古い反応ですが,これまで同反応の不斉化に成功した例はありませんでした。柴富准教授らは独自に開発した有機分子触媒を利用することでβ−ケトカルボン酸の脱炭酸的塩素化反応が極めて高い不斉収率で進行することを見出しました。本反応では対応するα−クロロケトンが最高98%eeの光学純度で得られます。

得られたクロロケトンの塩素原子は様々な置換基に変換することができます。例えば窒素原子に変換することでアミン化合物が合成でき,硫黄原子に変換すればチオエーテルが合成できます。柴富准教授らは,本手法を利用して強い生理活性を持つ天然有機化合物の合成を達成しました。今後,医薬品の合成ルートの高効率化や新薬開発への応用が期待されています。

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ファンディングエージェンシー:

科研費 新学術領域研究(有機分子触媒による未来型分子変換)No.26105728
科研費 挑戦的萌芽研究 No.16K13993
博士課程教育リーディングプログラム(超大規模脳情報を高度に技術するブレイン情報アーキテクトの育成)

論文情報:


Kazutaka Shibatomi*, Kazumasa Kitahara, Nozomi Sasaki, Yohei Kawasaki, Ikuhide Fujisawa, Seiji Iwasa
“Enantioselective decarboxylative chlorination of β-ketocarboxylic acids”
Nature Commun. 8, 15600 (2017).
https://www.nature.com/articles/ncomms15600


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