馬の進化を分析する新しい研究により、移動パターンや環境の変化が新しい特徴の発達を促すことが明らかになった。この研究結果は、特徴の発達により種は新しい生態的地位の環境を生き抜くことができると主張する急激な表現型の進化と呼ばれる理論に反するものである。基本的にこれは、特徴が初めに進化して新しい環境への種の分散が促進されたのか、もしくは、新しい環境への分散で新しい特徴が発達したのかという、鶏が先か卵が先かのような話である。急速な表現型の進化が起こったのだとしたら、分岐群が新しい環境に入ってそこで生き延びるために新たな特徴が必要とされるとき、分岐群の拡大の初期段階で、生態学的に関連のある特徴がいち早く変化したはずである。しかしJ. L. Cantalapiedraらが数百万年間の馬の進化を調査した際にはそういったパターンは発見できなかった。Cantalapiedraらは今回、約1,800万年前から現在までの系統樹に載っている138種の馬の化石の特徴を分析した。体の大きさと歯の大きさ(歯が大型化することで馬は新しい種類の植物を食べるようになると考えられることから、これは重要である)に注目し、その結果、体の大きさの進化速度は種分化率の高い種と低い種で大差はなく、歯の大きさの進化速度は種分化率が高い種で著しく遅かったことが判明した。Cantalapiedraらはまた馬がアメリカ大陸にどのように適応したかも調査した。これまでは草原の出現につれ補完的な特徴が進化したと考えられていたが、最近では草原は馬がアメリカ大陸に来る前から存在していたことを示唆する証拠がある。すでに整っていたこの環境と種分化データを組み合わせ、環境と移動パターンが新しい特徴の発達を促したとCantalapiedraらは述べている。
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