新しい研究の報告によると、初めて理論化されてから1世紀を経て、レンズ‐サーリング歳差運動(一般相対論における「慣性系の引きずり」の効果)が、遠方の連星系において検出されたという。20年にわたる研究の結果、アインシュタインによる一般相対性理論の予測が確かめられたことになる。一般相対性理論の予測によると、質量の大きな物体が回転すると周囲の時空が引き寄せられる。この現象を慣性系の引きずりという。その結果、重力で結びつけられた天体の軌道運動に歳差が現れる。これまでも、自転する地球の重力場で行われた人工衛星実験では慣性系の引きずりが検出されていたが、その効果は非常に小さくて測定が困難だった。白色矮星や中性子星といった質量の大きな天体ほど重力場が強いので、この現象を観察しやすい。Vivek Venkatraman Krishnanらは、若いパルサーが大質量の白色矮星と共に密接に高速で軌道運動している「PSR J1141-6545」を観測した。20年近くにわたりパルスの到達時間を100マイクロ秒の精度で測定した結果、軌道パラメータにおける長期ドリフトの確認に成功したという。Venkatraman Krishnanらは、このドリフトを起こしうるその他の可能性を排除した後、これは相棒の白色矮星が高速自転していることによる、レンズ‐サーリング歳差運動の結果であると結論付けた。この研究結果によって、一般相対性理論の予測は裏付けられ、著者らは白色矮星の自転速度の制約に成功した。
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