新しい研究によると、高い雲の中に人為的な大気汚染物質などの大気エアロゾルが存在すると、周囲の空気の湿度が上がり、嵐雲の中の上昇気流速度が増加するという。この研究結果から、広く観測されながらも不明な点の多い大気現象を説明する、新たなメカニズムが得られた。また、特にエアロゾルの多い熱帯地域において、激しさを増す雷雨を予測する際の物理的根拠も得られた。世界規模の観測によって、エアロゾルが天候に及ぼす影響が明らかになっている。例えば、エアロゾルには深い対流雲中の対流を強める働きがあり、雷雨中に形成される対流雲と同様に、嵐の規模と激しさを増加させる。これまでの研究では、2つのメカニズムによって、エアロゾル濃度が対流の激しさに影響を及ぼすことが示唆されてきた。その両方において、潜熱が大気中に放出され、雲の中の水分が凝縮(温暖な期間「ワーム・フェーズ」)または凍結(寒冷な期間「コールド・フェーズ」)して、空中を浮遊する微粒子になる。しかし、エアロゾルと増加する対流との関連はよくわかっておらず、現在と将来における異常気象の危険性を理解するうえで、大きな障害となっている。人間の活動が大気エアロゾルの大きな発生源になっている今、この問題は特に重要である。この問題に対処するため、Tristan AbbotとTimothy Croninは詳細に雲過程をシミュレートできる大気モデル「大気モデリングシステム(SAM)」を用いて、雲とエアロゾルの相互作用を研究した。研究の結果、高精度のシミュレーションを行うことで、観測されているエアロゾルと対流との関連を再現できることは示されたが、AbbottとCroninは以前に示唆されたどちらのメカニズムもこの活性化を十分に説明できないことを見出した。著者らは、次のような3つ目の可能性を提案した。エアロゾル濃度が高ければ、より多くの雲が発生して環境湿度が上がり、より多くの凝縮水が周囲の空気に混ざる。空気の湿度が高いと強い上昇気流が発生するので、大気対流が激しくなり、活発な雷雨が発生することになる、というものである。
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