image: Researchers at The University of Tokyo Institute of Industrial Science use artificial intelligence to predict the size of cells over time without the need for simplifying assumptions, which may lead to a new understanding of microbiology principles and improved drug manufacturing from recombinant bacteria view more
Credit: Institute of Industrial Science, the University of Tokyo
細胞成長と分裂による自己複製は、生物の最も重要な特性である。近年の計測技術の発展により、1つ1つの細胞の成長や分裂を長期に渡って計測することが可能になってきた。 その結果、さまざまな計測量から細胞の成長・分裂を支配する法則を見出す試みが数多く進められている。しかし、一定の環境下に置かれた細胞でも、細胞のサイズや細胞分裂までの時間などを制御する法則は、しばしば大きな成長ゆらぎに隠され、見出すことが容易ではなかった。
東京大学 生産技術研究所の上村 淳 特任助教と小林 徹也 准教授は、点過程と呼ばれる、時間・空間的に離散的な点でイベントが生じる確率現象を表現・解析するための数理手法を応用することで、細胞サイズの変化を追った時系列データから細胞サイズを制御する法則を推定する新たな手法を提案した。計測された細胞サイズの変化を、過去の細胞サイズの変化に依存する成分と成長ゆらぎに依存する成分とに切り分ける柔軟な手法を活用することにより、従来の解析法では取り除けなかった成長ゆらぎに起因した偏りを除き、細胞分裂時の計測量間の関係性をより正確な形で表現・推定することができた。本手法は、細胞の成長や分裂と強い相関関係を示す指標(測定量)をより効果的に特定することで、その背後にある細胞の自己複製制御の原理を解明する強力な手法となると期待される。
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本研究成果は、2021年7月8日にAmerican Physical Societyによる「Physical Review Research」に掲載された。
Journal
Physical Review Research