体内の重要な代謝産物を増強するビタミン補充は筋委縮の進行を遅らせ得ることが、マウスの新たな研究から示された。この研究は、筋ジストロフィー患者に対するこの化合物の利益の可能性についてさらなる研究を行うことを支持している。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)やその他の筋疾患は、ミトコンドリア(いわば細胞の発電所)の機能不全に関連することが示されている。ミトコンドリア機能不全は、徐々に筋を弱め、心臓や呼吸器の機能不全に至ることが多い。DMD治療アプローチにおける最近の進歩にかかわらず、効果的かつ安全な治療は未だに存在しない。今回Dongryeol Ryuらは新たな洞察を提示し、ミトコンドリア機能において中心的な役割を果たす分子であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の低濃度が、DMDと関連することを明らかにした。著者らはDMD患者の骨格筋を分析し、NAD+を枯渇させる酵素の発現が亢進していることを見出した。健康なマウスでは、ミトコンドリア形成に関与する遺伝子の発現にNAD+合成との高い相関が認められるのに対し、マウスおよび線虫のDMDモデルでは筋内のNAD+ 濃度が低いことが示された。さらに、両動物に対してNAD+前駆体であるニコチンアミドリボシドを食餌により補充したところ、可動性が改善し、筋の線維化と炎症が低下したことが示された。補充を受けたマウスでは、握力の増強が示され、筋障害が生じにくくなった。これらの観察結果は、NAD+を増加させることは、神経筋の疾患や損傷に対する独自の薬物療法戦略となる可能性がある。
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Journal
Science Translational Medicine