News Release

小細胞肺癌が分泌する 2 種類のマイクロ RNA のパターン診断(検出) を DNA コンピュータで実現

Peer-Reviewed Publication

Tokyo University of Agriculture and Technology

Graphical Abstract

image: DNAs autonomously recognized two microRNAs, miR-20a and miR-17-5p, and formed a four-way junction structure that was captured in the nanopore, showing long blocking currents. view more 

Credit: Figure adapted with permission from Anal. Chem., 2018, 90 (14), pp 8531-8537. Copyright © 2018 American Chemical Society

現状:最近癌診断において細胞生検に代わる液体生検(リキッドバイオプシー)が、低侵襲早期診断法として 注目されています。マイクロ RNA は短鎖の RNA で、癌腫瘍細胞特異的な配列のマイクロ RNA が分泌されるため 癌の早期診断マーカーとして着目されています。体液中でのマイクロ RNA はエクソソームと呼ばれる小胞体に 包まれているものも多く、高精度な診断を行うにはエクソソームを分離抽出する必要があり、現状では煩雑な 抽出作業を経て診断を行うしかありません。また癌腫瘍細胞から分泌されるマイクロ RNA は複雑なパターンで 分泌されることから、可能な限りたくさんのマイクロ RNA の定量を行う必要がありました。

研究体制:本研究は、大学院工学研究院生命機能科学部門の川野竜司テニュアトラック特任准教授と工学府大 学院生 平谷萌恵らによって実施されました(科研費若手研究 A 16H06043 により実施)。また現在各種医療機関、 大学病院と共同研究を開始しています。

研究成果:本研究では DNA 分子自体が自律的に他の分子(インプット)を認識し、その情報を伝える(アウト プット)ことができる DNA コンピューティング技術を応用し診断技術に展開しています。小細胞肺癌の次世代 診断マーカーである 2 種類のマイクロ RNA(miR-20a、miR-17-5p)が同時に分泌されると、その 2 種類のマイク ロ RNA を認識し、複合体構造を作る診断用 DNA を人工的に設計・合成しました。合成した診断用 DNA を用いて 2 種のマイクロ RNA が「同時に存在するとき(1 1)」、「片方しか存在しないとき(1 0)or(0 1)」、「どちらも存 在しないとき(0 0)」の 4 種類のパターンをマイクロ RNA と診断用 DNA の複合体構造の違いとしてそれぞれ見 分けることに成功しました。(図 1)。ナノポアを用いた計測では、マイクロ加工技術で作製したマイクロデバイ ス中の微小液滴中で計測を行っており、その DNA がナノポアを通過する電気信号を検出することで高速・簡易 診断を実現できました。本研究の成果に関し特許出願(特願 2018-121179)も行っています。

今後の展開:本研究によって、癌の次世代早期診断マーカーであるマイクロ RNA の発現パターンを迅速に検出 することに成功しました。本成果はエクソソームの分離を必要としない体液そのものから煩雑な前処理無しで 癌特異的に診断できる可能性を示しています。今後は、各種医療機関と共同でより複雑なマイクロ RNA のパタ ーン診断に関して検証を行い、将来的には健康診断のような大規模診断の現場において癌の早期簡易診断とし て検査としての展開を目指します。

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研究に関する問い合わせ◆ 東京農工大学大学院工学研究院

生命機能科学部門 テニュアトラック特任准教授 川野 竜司(かわの りゅうじ) TEL/FAX:042-388-7187
E-mail:rjkawano@cc.tuat.ac.jp


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