News Release

小麦はどのようにして破壊的な強敵真菌との進化の戦いに敗れたのか

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

破壊的な真菌から身を守れる小麦の遺伝子が発見されたが、この遺伝子が多くの小麦では1980年代に失われていたことが明らかになった。この知見は、現在まで継続している真菌の流行を説明でき、小麦のこの遺伝子を元に戻せば、真菌の影響を抑えられそうなことを示唆している。1980年代の中頃にブラジルで出現したウィート・ブラスト(Wheat blast)は、最近アジアでひどい作物の損失を引き起こしている小麦の病気である。ウィート・ブラストの原因となる病原体、Pyricularia oryzaeは、コメやカラスムギ、ドクムギなどの他の作物を冒すことが知られており、2つの遺伝子、PWT3およびPWT4を使って宿主を攻撃する。最近、研究者グループが、カラスムギとドクムギのP. oryzaeへの反撃システムとして作用する、対応する遺伝子を同定した。Yoshihiro Inoueらは、この耐性遺伝子、PWT3-Rwt3およびPWT4-Rwt4が、小麦を真菌から守ることができるかどうか検討を試みた。耐性遺伝子をクローニングし、一般的な小麦におけるその効果を検討したところ、これらの遺伝子の保護的な役割が確認された。小麦の多くの株はこれらの保護遺伝子を保持している。しかし、Inoueらの指摘によれば、収量が多く酸性でない土によく適応した小麦の株(しかし反撃遺伝子PWT3-Rwt3を持たない)が、ウィート・ブラストの直前にブラジルに導入された。この新しい高収量の株が重要な病原体防御遺伝子を持たないことを知らず、人々はこの小麦株を農業に使用した。Inoueらは小麦ゲノムの世界的データベースを解析して、大陸間でのPWT3-Rwt3の欠失を追跡し、この反撃遺伝子の欠失がウィート・ブラストの拡大に対応していることを発見した。さらに、解析により、反撃遺伝子を欠いた小麦株が植え始められた時期と同様な時期に、真菌が攻撃遺伝子PWT3の変異(宿主への感染能を促進する)を獲得したことも明らかになった。これらの知見は、小麦の防御システムを弱体化させる遺伝子変化と、真菌の攻撃システムを強化する遺伝子変化の組み合わせが、ウィート・ブラストの大流行に寄与している可能性が高いことを示唆している。Takaki MaekawaとPaul Schulze-Lefertが、関連したPerspectiveでこの研究について議論する。

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