光遺伝学制御を用いて、匂いが存在していなくても脳の嗅覚処理中枢(嗅球)で匂いとして認識される電気的サインが作成された。マウスの脳に適用したとき、このアプローチは、哺乳類の脳が匂いをどのようにして認識し、ある匂いと別の匂いをどのようにして区別しているのかに関するニューロンの論理の理解を深めるために有用なことが明らかになった。「嗅覚の機能の仕方の解明は、最近、2つの理由で興味深い新しい展開を迎えた。COVID-19の確実な初期症状が嗅覚喪失であることと、病気を嗅ぎ分けられるように動物を訓練できる可能性があることである」と、筆頭著者であるEdmund Chongは述べている。「したがって、匂いのメカニズムを深く理解することは、パンデミック時の疾患発見と治療のための強力なツールのデザインに役立つ可能性がある。」。感覚の科学では、感覚刺激により作り出される神経活動、そしてこの活動がどのようにして感覚を形成するのかを理解しようとしている。匂いは嗅球(脳の前部にある小さな構造)で複雑な活動パターンを誘発する。刺激(場所とタイミングはさまざまである)に反応する個々のニューロンの組み合わせが、それぞれの臭いをどのように認識するかの基盤となっていると考えられている。しかし、このような活動の複雑さを解明し、匂いの知覚がどのように決定されているのかを理解することは困難である。Edmund Chongらは、別の研究室で光を当てることで脳細胞を活性化できる(光遺伝学と呼ばれる)ように遺伝的に改変されたマウスを利用できることに基づいて、実験をデザインした。そして、正しい「匂い」を認識してレバーを押したときだけ水の報酬を与えて、6つの糸球体(匂いに惹起されるパターンに似ていることが知られている)の光活性化により生み出されるシグナルを認識できるようにマウスを訓練した。別の一組の糸球体を活性化(異なる匂いをシミュレート)した後でマウスがレバーを押した場合は水が得られないようにした。Chongらはこのモデルを用いて、糸球体活性化のタイミングと組み合わせを変化させた。そして、それぞれの匂いを定義する一組の中のどの糸球体を最初に活性化させるかを変化させると、マウスが匂いシグナルを正しく感知して水を得る能力が最大30パーセント低下することを発見した。結果に基づき、新しいアプローチにより、組み合わせると、脳がどのように感覚情報を匂いの受容に変換しているのかに関する暗号が得られる、重要な空間的・時間的神経特性が明らかになった。
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