欧州とカナダの研究者らが、今日までで初の大規模な現場調査2件で、長期的にネオニコチノイド系殺虫剤に曝露することでハチに悪影響が出るというネオニコチノイドについての説を実証した。この研究結果により、広く使用されているこれらの殺虫剤の影響は地域環境とハチの種類によって左右されるものの、結局のところは、繁殖成功率の低下から死亡まで、大半が悪影響であることが判明した。今日の大半の環境下では、ハチは主要授粉媒介者である。1990年代のハチのコロニーの健康状態についての研究で、主要作物に幅広く使用されるネオニコチノイドが授粉媒介者であるハチには有害であることが指摘され始めた。しかし、一つには気候変動などの現実世界のハチに対する他の脅威が与える影響も評価しなければならないことから、どのように、またどの程度、好悪半ばする結果が出ているのかを突き止めることは困難であった。また、これまでの研究で対象となったハチは、現場で実際に見られる以上に多くの量の殺虫剤に曝露していることも指摘されている。最終的には、関係するPerspectiveでJeremy Kerrが、「時期、量、ハチに特有のネオニコチノイドの影響についての不確定要素ゆえに、政策立案者は規制過程では予防原則を頼りにせざるを得ないことが多い」と述べている。
今回初めて、ネオニコチノイド特有の影響をより明確にするために2つの研究が考案された。その1つ目の研究では、Ben Alex Woodcockらが「ネオニコチノイドの影響についておそらくこれまで実施された中で最も大掛かりな現場実験」を行ったとKerrは述べている。Woodcockらはドイツ、ハンガリー、英国においてネオニコチノイド処理を行った菜種の近くで実験を行い、3種のハチに対する影響についてデータを収集し、それぞれのケースにおいてネオニコチノイドが個体数を減少させるという悪影響を及ぼしていることを発見した。ただこれは環境状況によって異なる。たとえば、ハンガリーと英国ではネオニコチノイドで処理した作物への曝露でミツバチのコロニーの越冬成功率が低下したが、ドイツでは低下しなかった。しかし、これら3ヵ国の全てでハチの巣にネオニコチノイド残留物が多いほど繁殖成功率が低いという関連はあった。2つ目の研究では、Nadejda Tsvetkovら研究チームがカナダの消費市場向けトウモロコシの栽培地域で研究を行い、農業に対する種々の強力な脅威からネオニコチノイド特有の影響だけを特定しようとした。彼らは、ネオニコチノイドに曝露した(ネオニコチノイド処理を行った作物ではなく、その近くの植物のネオニコチノイドで汚染された花粉からの曝露である場合が多い)働きバチは平均余命が短く、そのコロニーは永久的に女王バチを失う傾向が高いことを発見した。Tsvetkovらは、ネオニコチノイドは一般的な殺菌剤と混ざると特に影響が大きいことも発見した。つまりそれは、ネオニコチノイドとその他の農薬の両方で処理したトウモロコシ畑の近くのミツバチはより大きな危険に晒されているということである。以上を総合し、2つの研究から「ネオニコチノイドのハチへの影響は、死に至るものから、死には至らないもの、相互作用的な影響までの複雑な組み合わせである」と分かったとKerrは述べている。「ネオニコチノイドに関する議論にとって重要な証拠が新たに加わり、政策立案者はそれを考慮する必要がある」という。
###
Journal
Science