森林は世界の炭素排出量の軽減に重要な役割を果たしている。今回ウガンダでの新しい研究で、土地所有者にわずかなインセンティブを与え、その土地の木々の伐採を控えさせることにかかるコストが森林消失で発生する炭素関連のコストよりかなり安いことが判明した。今日の森林破壊は大半が低所得国で発生しているが、その森林破壊の抑制が世界の二酸化炭素排出を軽減する最もコスト効率の高い方法の1つだと考えられている。森林破壊を最小限に抑えるにはインセンティブプログラムが役立つと思われる。しかしその有効性はほぼ分からない。というのは、インセンティブを受けなくても環境に配慮した行動をとっていたと考えられる人もいれば、木の伐採場所をそのプログラム対象となっている地域からその近くの対象外の地域に変えただけというプログラム参加者もいたためである。そこでSeema Jayachandranらはそういったプログラムの効果をより詳しく計るために、ウガンダの121の村で実験を行った。2年にわたるプログラムで、土地所有者は伐採せずに残した森林1ヘクタール当たり年間70,000ウガンダシリング(2012年のUSドルに換算して$28)のインセンティブを約束された。森林モニターでプログラム参加者の土地の抽出検査を行って木々の最近の伐採について視察し、さらに衛星データを用いてプログラム対象全域の森林面積を測定した。インセンティブを受けた群の平均森林消失率は4%で、それは特段の対策を行わない「BAU」対照群の消失率9%の約半分であったとJayachandranらは報告している。プログラム参加者が伐採の場所を近くの土地に変えたという証拠はつかめなかった。2年にわたるプログラムでの炭素排出の遅れを評価する経済分析によると、その利益はプログラムのコストの2.4倍にもなるという。プログラムが一旦終わったとたんに土地所有者が2年にわたるプログラムの間に消失していたであろう木を伐採して「巻き返し」を図ろうとしても、プログラムの利益はそのコストを上回るというJayachandranらの報告は注目に値する。
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