コンピュータモデリングの力を利用して、天然の心臓弁の特徴を真似た、生物工学による心臓弁がデザインされた。この組織工学による心臓弁(TEHV)は安全で、ヒツジに移植後1年間良好に機能し、いつの日か心臓弁疾患の患者の治療ツールとなる可能性があることが示された。患者は通常、心臓弁膜症(依然として世界的な健康負担である)に対して人工心臓弁を使用しているが、現行の人工心臓弁は寿命が限られており、若年患者では適切に成長しない。研究者は生物工学的手法を用いて、天然の循環系によりよく適応するよう自分自身を再生しリモデリングできる、生きている置換用心臓弁を長い間探求してきた。しかし、現在までに検討されたTEHVはいずれも、経時的な血流量の変化に継続的に適応するために必要な、天然の心臓弁に特有の性質を持っていない。この障害を克服するため、Maximilian Emmertらは、コンピュータモデリングを用いて、移植後にTEHVがどのように経時的にリモデルするかを予測した。この戦略により、弁の機構と組織構造が改善された、長持ちするTEHVをデザインできた。重要なことに、Emmertらのモデルで、以後のリモデリングを補償するために弁がどの方向に伸びるかが予測できた。Emmertらはポリマーメッシュ構造に播種して4週間培養し増殖させた血管細胞からTEHVを作製し、細胞構造を取り除いて弁をヒツジ11頭に移植した。MRI画像により、11個のTEHVのうち9個が1年間の試験期間終了時にも機能し続けており、天然の心臓弁と同様に自分自身をリモデリングしていたことが明らかになった。関連したFocusで、Jonathan Butcherは、この研究は複雑な未解決の問題を解決し、TEHV技術の「臨床適用に向けた重要な進歩」となると述べている。
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Journal
Science Translational Medicine