ワクチンを送達し、見えないように皮膚にワクチン接種歴を符号化できる、蛍光量子ドットを用いた微小針の技術基盤を研究チームが開発した。スマートフォンで赤外線検出できるこのドットは、分離したヒト皮膚への適用時は光退色(5年間の太陽光をシミュレート)に耐性があり、ラットで試験したときは最長9ヵ月間検出可能であった。この技術基盤は使いやすいため、低所得国でも高所得国でも困難となっている、正確な医療記録を信頼性の高い方法で保持するための方法を臨床医に提供できる。医療記録の保持は、適切なワクチン接種率および他の大量の健康介入法のために不可欠である。しかし、特に集約されたデータベースのない資源の少ない状況では、記録の保持やアクセスは困難な場合があり、これが世界で毎年生じているワクチンで防げる150万人の死亡に寄与している。また、記録保持の問題は、米国とオーストラリアの麻疹などの疾患の大流行も悪化させた。解決策を求めて、Kevin McHughらは、生体適合性の量子ドットを含む微小粒子を用いてワクチン接種を記録する技術基盤を開発した。このアプローチでは、さまざまなパターンで皮膚に微小粒子を送達する、一連の微小針を使用する。この微小粒子は肉眼では見えないが、改変したスマートフォンで赤外線検出できる。ラットではこの量子ドットをポリオワクチンとともに送達でき、分離したブタおよびヒトの皮膚でも送達後に検出できた。この技術は、分散的なデータ保管およびバイオセンシングを可能にすることで、発展途上国では非常に価値があると考えられるとMcHughらは述べている。また、今後の安全性試験および製造の改良により、このアイデアを概念実証段階から現実世界での実用へと移行させることができるだろうとも述べている。
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Journal
Science Translational Medicine