News Release

国立公園によって森林保護効果に違い!?

Peer-Reviewed Publication

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

Effect of Protection on Changes in Forest Cover from 2000 to 2012

image: The bars show the effectiveness of all seven parks in the study together as well as individually for each park. The lines represent minimum and maximum estimates of the effect of protection. view more 

Credit: OIST

このニュースリリースには、英語で提供されています。

世界の森林面積は、年間およそ13万平方キロメートル、ひと月で換算すると沖縄の約6倍の面積という驚くべき速さで減少しています。森林減少を阻止するために政策立案者がよく用いる手段は、生態学的に重要なある特定の地域を保護区に指定するというものです。この度、沖縄科学技術大学院大学のパヤル・シャー博士とイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のキャシー・ベイリス博士は、森林破壊の流れを食い止める上での保護区の有効性について、新たな研究成果を発表しました。本研究では、計量経済学の統計的手法を用いて、保護区の有効性が、個々の公園間、また同じ公園内の異なる地域間においてどれほど違い得るかについて詳細にわたり考察しています。こうした研究は、森林保護がどの地域でどれくらい成功しているのかを政策立案者が理解する手助けとなり、今後さらに効果的な保全計画の策定に役立ちます。本研究成果は、米オンライン科学誌プロス・ワン(PLOS ONE)に米国東部夏時間2015年6月3日午後2時(日本時間6月4日午前3時)に掲載されます。

本研究で研究者たちが焦点を当てたのはインドネシアでおこなわれている保全の取り組みです。同国では、森林破壊が進行することによる炭素排出量の増加や、生物多様性を支える生息地の喪失に対して懸念が広がっています。このような事態を受けて、インドネシアでは1990年から2010年の間に、保護下にある土地の総面積を4%拡大しました。しかしOISTのシャー博士は、自然保護区の設置は必ずしも森林破壊の抑制を保証するものではないと指摘します。実は、政治的およびその他の要因が働いた結果、実際にはこれまで一度も人間による土地利用の脅威にさらされたことのない地域に保護区が置かれていることがしばしばあります。このような事実があるため、保護区の森林破壊に対する実際の効果には疑問が生じます。

保護区の有効性を評価するために、研究者たちは最新式のリモートセンシングのデータを用いて、保護区に指定される前と後で森林面積を計測し、これに相応する保護されていない類似地域と比較しました。これは保護区の有効性を統計的に導き出すのに一般的に用いられる方法です。この手法を用いる上での最大の難点の一つは、保護区と比較できる非保護区の土地を見つけることで、その際に森林破壊の影響度だけでなく、今後保護の対象として選ばれる可能性についても考えなければいけないことです。研究では、保護区と非保護区を対応させるために、勾配、高度ならびに都市、道路および河川からの近さなど、森林破壊に影響を及ぼすさまざまな変数を考慮する標準的な方法を用いていますが、それでもなお推定を偏らせる可能性のある不明な要素が数多くあるのです。

シャー博士とベイリス博士は、自分たちの推定に偏りの可能性があるかどうかを検証するために、計量経済学の統計的ツールを研究に取り入れています。その後に、偏りの原因となり得る種々の要因を説明することにより、保護区の有効性についての推定を改良しました。この場合の偏りの原因となり得る要因には、土地利用を制限する経済的・政治的要因、対応する比較可能な非保護区の欠如、ならびに対応はするものの森林破壊の脅威の度合いが保護区よりも大きい地域などが含まれると考えられます。

こうしたより高度な統計的方法を用いることにより、シャー博士らは森林破壊の抑制効果には公園間で相当な差異があることを発見しました。保護区の効果として、全国平均では、森林面積が1.1%増加すると推定されています。しかし本研究では、この数字は誤解を招きかねないことを示しています。なぜなら、個々の公園レベルで推定すると、森林面積が3.4%減少した公園から5.3%近くも増加した公園まで幅があるからです。

本研究で使用した方法は、多肢に渡る保全政策の効果を考察する上で全体的な枠組みを提供するものです。また保全効果の差異を体系的に探る手段ともなります。これは、政策をどのように実施すれば最大の効果が得られるかについての手がかりを得るため、最も良い結果を生んでいる公園ならびにそれらの公園内の地域を調べる際に、特に重要です。シャー博士はこう付け加えます。「保護の有効性の平均値は国レベルで推定されることが多いのですが、そのような平均値は誤解を招きやすいと考えています。インドネシアの事例からも明らかなように、とても効果的な公園がある一方、あまり効果的でない公園もあるかもしれないからです。」

また、「同じ公園内ですら、区域によって保護効果に大きな違いがあることを発見したときは驚きでした」と同博士は言います。森林保全の取り組みには様々な要因が影響するとともに、森林資源の回復には長い時間を要します。そのため、常に政策の最適化が急がれています。世界規模での森林保全活動も活発化しており、2010年には愛知県名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催され、2020年までに少なくとも陸上の17パーセントを保護区とする目標が採択されました。日本国内では、国土面積の14パーセントを自然公園に指定しています。「日本では、土地の所有に関係なく一定の地域を公園として指定し、自然保全に関する規定を設けて管理する地域性自然公園制度を採用しています。この日本独特の新しい国立公園制度の効果を、私たちが開発した統計的手法を用いて評価すれば、興味深い結果が得られるかもしれません」とシャー博士はしめくくりました。

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