移動速度の速い氷河は遅い氷河よりも地形をえぐる効果がはるかに大きいことが、新しい研究によって見出された。この結果は、長年科学者を悩ませてきた現象 ―― なぜ氷河の移動速度が遅い極地ほど、氷河による長期の浸食率がはるかに低いのか ―― を説明できる可能性がある。世界中で、氷河はさまざまな率で陸地を浸食しており、最も急激な氷河浸食の一部は中緯度地域で起こっている。こうした過程は長期にわたって継続中で、谷やフィヨルドや山を削り出しているが、まだ十分には理解されていない。その理由の一つに、氷河の氷と岩盤との界面を研究するのが非常に難しいことがある。今回、Frederic Hermanらはニュージーランドのフランツ・ジョセフ氷河に注目し、2013年から2014年にかけての5ヵ月間、リモートセンシング(遠隔測定)によってその氷河の動きを調査した。それと同時に、縁に押し出された堆積物の量を観測することによって、氷河の下における浸食率の定量化も行なった。Hermanらは速度と浸食のデータをもとに、世界のさまざまな気候帯における変動を表した氷河浸食の法則を作成した。彼らによると、この研究によって、浸食は傾斜地形と降水量のわずかな違いに非常に敏感なことが判明し、速い氷河は遅い氷河よりも地形をえぐる効果が大きいことが示唆されたという。Hermanらの研究結果は、地球の歴史を通して氷河作用が山岳地形に及ぼした影響を説明するのに役立つものである。
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Article #12: "Erosion by an Alpine glacier," by F. Herman; M. Brughelli; S.N. Lane; T. Adatte at University of Lausanne in Lausanne, Switzerland; O. Beyssac at Sorbonne Universit�s in Paris, France; O. Beyssac at CNRS in Paris, France; O. Beyssac at Mus�um National d'Histoire Naturelle in Paris, France; S. Leprince; J.Y.Y. Lin; J.-P. Avouac at California Institute of Technology in Pasadena, CA; S.C. Cox at Institute of Geological and Nuclear Survey Science in Dunedin, New Zealand.
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