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海底の脆い隆起部から、過去に南極の氷が急速に後退したことが明らかに

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究によると、海面下の氷河地形について詳細な海底地図を作成したところ、かつて南極氷床は、現代見られる最速の後退よりもはるかに速い速度で後退しており、その速度は最も極端な現代の速度を少なくとも1桁上回っていたことが判明したという。およそ1万4000年前、最終氷期最盛期(LGM)の後に氷が後退した結果、海底堆積物中に脆い隆起部が残った。著者らはその隆起部を自律型無人潜水機(AUV)を使って入念に測定し、1年に10キロメートル以上のペースで退氷していたと推定した。この研究結果は、巨大な氷床が急速に海に消えたことを明確に示している。このようなイベントが繰り返し起これば、現代の海面上昇に多大な影響を及ぼすだろう。南極の棚氷(潮間氷河の海に浮かんだ末端部)は、南極海と南極氷床の境界を成している。接地線(氷床が海底から離れ、浮き始める地点)では、あたたかな空気と海水の両方によって、上からも下からも氷が溶ける。その結果、こうした領域は急速に後退しやすい。しかし、現代の氷消失のペースは非常に速いが、最大規模の後退に匹敵するかどうかはわかっていない。南極半島の東岸にあるラーセン棚氷において、Julian Dowdeswellらは、柔らかい海底堆積物中に見られる一連の隆起部を調べた。彼らはこの隆起部を、潮汐作用によって棚氷が上下するときに、接地線に残された遺物だと解釈したのである。陸上で見られる氷河のモレーン(氷堆石)のように、接地帯にある楔形の隆起部は氷河後退の記録である。これをもとに、Dowdeswellらが数日または数週間の精度で氷の後退速度を推定したところ、この地域のLGM後の退氷速度は1日に40~50メートルだったことが判明した。関連するPerspectiveではMartin Jakobssonが、「おそらく最も重要なことは、氷河力学の複雑な歴史を解明する際に、高精度の海底マッピングが非常に役立つことを、Dowdeswellらが実証したことだろう。氷に覆われて近づきにくい極地域において、海底のほんの一部が地図化されたにすぎず、発見して学ぶべきことはまだ多く残されている」と述べている。

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