新しい研究により、カナダ西部の大部分は早くも14,000年前には氷結していなかったことが判明した。この結果はコルディエラ氷床(CIS)がこれまでの推測より1,000年以上早く後退したことを示すとともに、気候パターンと人類の移住を解明する上で重要な意味を持っている。これまでは、12,500年前にはまだカナダ西部の大部分はCISに覆われていたと推測されていた。Brian Menounosらは今回、CIS後退後に形成された氷堆石、つまり氷河の両端に沿って蓄積した堆石列から76の試料を集めた。Menounosらはベリリウム同位体を使ってその試料の年代を特定し、CISは実際に大半が14,000年前までに融解してしまった可能性があること、一方、当初むき出しになった山頂ではその後凹み部分に新しく小さな山岳氷河が形成されたと考えられることを発見した。次にMenounosらはシミュレーションを使い、温暖化によってCISが後退がした経緯を示した。その後退だけで14,500~14,000年前には海面が2.5~3.0メートルも上昇している。Menounosらによると、規模的に同等なグリーンランド氷床は今後、更新世最後期における気候の急変に対するCISの反応と似たような反応を示すという。MenounosらはまたCISの融解は北半球でかなりの冷却効果を発揮したと述べている。最後にMenounosらは、アメリカ大陸での人類の移住という点では、自分たちのデータは、この地域の低地の大半は11,000年前まで氷に覆われたままであったため人類は西側海岸を南下したという説を支持するものではないと述べている。これらの研究結果はPerspectiveでShaun A. MarcottとJeremy D. Shakunが取り上げている。
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