人間による環境かく乱が減少したと考えられる米国の保護区の63%において、ヒトに関連する騒音によりバックグラウンドの音レベルが2倍になっていることが、新たな研究から明らかにされた。この結果は、都市の問題と考えられることの多いヒトによる騒音汚染の程度が、より遠隔地にまで広がっていることを示している。騒音汚染は野生動物に対して、例えば捕食される動物において捕食動物が近づく音を聴く能力を低下させたり、動物が交尾相手を探す能力を妨げたりすることで、深刻な影響を及ぼす可能性がある。植物でさえも、種子を散布してくれる草食動物やげっ歯類の行動や生息地が騒音のかく乱によって変わるとしたら、騒音汚染の影響を受ける可能性がある。このような変化は、生態系にカスケード効果を及ぼす可能性がある。米国全土、特に生物多様性を安全に保護するために指定された保護区域における騒音汚染の程度を定量化するため、Rachel Buxtonらは全国の492箇所で音の録音を行った。多様な地域について、それぞれが特有の地理空間的特徴を有するため、コンピュータアルゴリズムを用いてベースライン、すなわち自然な音のレベルを確定した。その結果、保護区の63%においてバックグラウンドノイズが3デシベル(dB)を超えており、21%の保護区では10 dBを超えていた。このことは、すなわちこれらの場所において、それぞれバックグラウンドノイズが2倍および10倍増加したことを意味している。著者らの報告によれば、自然保護区域は騒音汚染への曝露が最も低いことが示されたが、それでもこれらの区域のうち12%ではヒトに関連する音のレベルが自然なレベルより3 dB上回っている。より厳格な規制を受けている保護区ではヒトに由来する騒音が少なかった。例えば、保護区内の指定重要生息地(designated critical habitat)は保護されていない生息地と比べて騒音の超過が56%少なかった。関連するpodcastで著者Buxtonは、いかに多様な地域が騒音汚染を受けているかについて詳細に説明しており、自分たちが収集したデータは、騒音汚染を軽減するための容易に解決可能な方法を示している、と指摘している。騒音汚染は、例えば輸送、開発、採掘に関連する土地利用などと緊密に関連しているようである。
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