News Release

サンゴの高品質ゲノムを使えば白化現象を予測できるのか?

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

保全遺伝学の新たな手法では、Acropora milleporaというサンゴの高品質ゲノムと環境データを併用し、このサンゴが気候変動(主要な保全重要性の特性)に対して示すさまざまな反応が研究された。その結果、白化しやすいサンゴは独特の遺伝子シグネチャーを呈することが示唆された。この結果を用いれば、白化が発生する可能性を事前に予想することや、将来の気候温暖化に対して最も弱いサンゴや最も強いサンゴを特定することが可能である。サンゴは光合成を行う藻類を組織内に住まわせているが、海水温が上昇しすぎると、生命維持に必要なこの藻類を放出してしまう。すると、サンゴは白くなり(「白化」)、最終的には死滅する。しかし、サンゴの温度限界や白化現象に対する反応は種によって異なる。こうした耐性の一部は遺伝性のものであると考えられているが、サンゴ種の高品質ゲノム資源が不足しているため、原因となる遺伝子はいまだに不明である。白化に関係している可能性のある遺伝的変異体を特定するため、Zachary Fullerらは、A. millepora(白化しやすい浅瀬のサンゴ)について染色体レベルのゲノムアセンブリをまず作成した。次にそれを、グレート・バリア・リーフで白化している213個のA. milleporaサンゴのコロニーから得られた、ゲノムワイド関連研究(GWAS)のデータと比較した。Fullerらは、白化に直接関係している特定の遺伝的変異体を見つけることはできなかったが、サンゴゲノム全体のシグナルから成る多遺伝子リスクスコアを用いれば、自然環境で白化する可能性を予測できることを示した。またこの分析によって、熱ストレス反応に関与しているサクシン遺伝子において、かなりの遺伝的多様性が見られることも明らかになった。多様性が見られるということは、その海域の環境に適応していることを示唆している。関連するPerspectiveではRachael BarとLeslie Guerreroが、「Fullerらが反復領域に対処するためにロングリード技術を用いて作成したゲノムは、サンゴの生態や進化、細胞生物学、成長を今後研究するうえで、計り知れないリソースになる。そして、生態学的に重要な系において、これまで困難だった調査が容易になるだろう」と述べている。

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