法医学のツールである放射性炭素年代測定を用いることで、研究者らは、ヒト成人の軟骨はほとんど再生しないことを見出し、関節疾患の治療はこれまで考えられていたよりも難しい可能性が示唆された。1950年代および1960年代の核実験に由来する放射性炭素を追跡することで組織の年代測定を行うこの方法により、健康な成人でも変形性関節症の成人でも同様に、軟骨は基本的に変化しない組織であることが明らかにされている。この所見により、変形性関節症に対する軟骨移植や幹細胞治療の成功が限られていることが説明され、また治療の取り組みを軟骨疾患の予防と関節のさらなる障害からの保護へと方向転換させる可能性がある。関節の表面を覆う組織である軟骨が、再生するのか、または障害にわたって「固定」されたままであるのかは議論の対象である。関節疾患が軟骨の代謝回転に及ぼす影響について知られていることはさらに少ない。Katja Heinemeierらは、すべての生物が食物を介して大気中の炭素14を摂取していることを利用した、核実験の影響の評価に取り組んだ。冷戦中には、核実験のために大気中の炭素14濃度が急上昇し、当時生存していた全ての生物において検出可能な刻印を残している。この方法は、これまで脂肪、筋肉、水晶体の年齢を推定するために用いられてきたが、今回Heinemeierらは、1935~1997年に生まれた8人の健康人と15人の変形性関節症患者の膝関節から得た軟骨組織について評価を行った。全ての人において、軟骨組織内に新しいコラーゲンの形成は実質的に検出されず、軟骨組織が本質的に変化しない構造であることが示唆された。この所見は、ヒトの軟骨は損傷後の治癒能が低い理由の説明に役立つとともに、変形性関節症や他の関節疾患の治療における新たな課題を示すものである。
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Journal
Science Translational Medicine