研究者らのチームが、微小粒子を用いた新規プラットフォームを開発した。これにより、鉄などの微量栄養素を保持して保護し、げっ歯類やヒト被験者に送達することができる。この微小粒子は、栄養強化食品などといったこれまでの栄養素送達法において悩みの種となっている、保存に伴う問題に取り組んでおり、発展途上国における微量栄養素欠乏の治療に役立つ可能性がある。世界で最大20億人が微量栄養素不足に苦しんでおり、このために先天障害、貧血および失明などの病態が生じたり悪化したりする可能性がある。複数の大規模臨床試験により、栄養強化食品が微量栄養素不足の治療に役立ち得ることが示されているが、発展途上国では保存や調理の段階における微量栄養素の安定性を維持することが難しいため、進歩が妨げられてきた。Aaron Anselmoらは、この障害に取り組むために熱安定性を有する微小粒子を開発した。この粒子はpH感受性の材質から成っており、微小栄養素を一度に4種類まで封入することができる。この粒子は、ヒトの毛髪断面よりわずかに大きく、ビタミンAや鉄などの栄養素を、熱、光、湿度、さらには沸騰水などの環境因子から保護する。著者らがまずこの新規粒子をげっ歯類に与えたところ、これらの粒子は問題なく溶解され、実験動物の腸内で吸収可能な栄養素を放出することを確認した。鉄微小粒子を含有したトウモロコシがゆを摂取した20例のヒト被験者を対象とした最初の試験では、バイオアベイラビリティの低下が認められたため、著者らはヒト腸管モデルを用いて鉄吸収について検討し、新規微小粒子製剤の最適化を試みた。このような改善により、微小粒子を含有した小麦パンを摂取したヒト被験者24例を対象とした第2の試験では、鉄負荷とバイオアベイラビリティが強化された。「このプロセスをキログラムレベルまで拡張することができたので、現在我々は産業界のパートナーと研究を進めており…メートル法のトンレベルで生産することを試みている」と、関連する説明動画の責任著者であるAna Jaklenecは述べている。「私は、これら(の微小粒子)のいくつかを含有したパンを自分でも食べたし、Bill Gatesも食べたと思うが、体調に問題は全くない」と、この研究の責任著者であるRobert Langerは付け加えた。
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Journal
Science Translational Medicine