News Release

糖尿病性腎臓病の新たな早期診断マーカーを発見

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

Measurement peak of post-translational modifier of serum albumin in diabetic patients

image: Mass spectrometer analysis of blood serum in diabetic patients. 1) SH-Albumin (unmodified), 2) Cys-Albumin (cysteine adduct (oxidized albumin), 3) Glu-Albumin (sugar adduct), 4) Cys-Glu-Albumin (simultaneous cysteine and sugar adduct), 5) Glu-Glu-Albumin (two sugar adducts) view more 

Credit: Associate Professor Hiroshi Watanabe

熊本大学の研究グループが、糖尿病性腎臓病における新たな早期診断マーカーとしての血清中「システイン付加アルブミン(酸化型アルブミン)」を発見しました。現在の診断マーカーとして頻用される尿中アルブミンに比べて、血清中の酸化型アルブミンは、より早期の腎病態を反映することに加えて、その上昇の程度が腎病態進行を予測する診断マーカーに成り得ることを示しました。今後、糖尿病性腎臓病の早期診断のための新たな診断マーカーとして酸化型アルブミンが活用されることが期待されます。

糖尿病性腎臓病は糖尿病の三大合併症の一つであり、進行するとその予後を改善することは難しく、出来る限り早期診断を行い、適切な治療介入を行うことが重要です。これまでに糖尿病性腎臓病の診断には、尿中アルブミン測定が用いられてきました。アルブミンは血清中および尿中に最も多く存在するタンパク質であり、血清中では浸透圧の維持に加え、脂肪酸や薬物の血清中輸送担体として機能しています。また、腎機能低下により濾過機能が正常にはたらかなくなると尿中排泄量が増大するため、糖尿病性腎症の早期マーカーとして頻用されます。一方で、特に2型糖尿病に由来する糖尿病性腎臓病には、アルブミン尿陰性例も多数含まれることが明らかになっており、このような複雑多様な病態に対して、新たな早期病態診断マーカーの開発が求められてきました。

本研究では、257例の2型糖尿病患者の腎病態進行と血清アルブミンの翻訳後修飾体との関連について評価しました。血清アルブミンは半減期が約20日であり、体内環境に応じてさまざまな化学修飾(翻訳後修飾)を受けることが知られています。今回は質量分析装置を用いて、5種の翻訳後修飾体を測定しました。その結果、糖尿病性腎臓病の進行に伴い、1分子のアルブミンに対して1分子のシステインが付加した酸化修飾体「システイン付加アルブミン(酸化型アルブミン)」の値が上昇することを発見し、酸化型アルブミンが腎病態の診断マーカーとなることを示しました。また、現在の診断マーカーとして頻用される尿中アルブミンに比べて、酸化型アルブミンは、より早期の腎病態を反映する可能性を見いだしました。さらには酸化型アルブミンが高値を示す患者では2年後の腎病態進行が早いことも示され、酸化型アルブミンは腎病態の進行を予測可能な診断マーカーとしても利用可能であることが示されました。

研究を主導した渡邊博志准教授は次のようにコメントしています。

「酸化型アルブミン測定は、現在のゴールドスタンダードとして頻用される尿中アルブミン測定に比べても早期の腎病態を反映する可能性が示されました。特に、2型糖尿病患者に由来する腎臓病ではアルブミン尿陰性例も多数含まれることから、血清中の酸化型アルブミンは糖尿病性腎臓病における新たな診断マーカーとしての活用が期待されます。」

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本研究成果は、米国糖尿病学会誌「Diabetes Care」に令和3年4月26日(日本時間)に掲載されました。

Source:

Imafuku, T., Watanabe, H., Oniki, K., Yoshida, A., Kato, H., Nakano, T., ... Maruyama, T. (2021). Cysteinylated Albumin as a Potential Biomarker for the Progression of Kidney Disease in Patients With Type 2 Diabetes. Diabetes Care, dc203003. doi:10.2337/dc20-3003


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