News Release

がん細胞は生息しにくい脳脊髄液内で鉄をハイジャックして生存する

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

生息しにくい遠隔の解剖学的環境である中枢神経系で生存するため、稀であるが致死的な軟髄膜転移(LM)をきたすがん細胞は、貴重な微量栄養素である鉄を天然のマクロファージから奪い取ることが、研究者らにより報告されている。この研究は、腫瘍細胞の驚くべき可塑性を示しており、またこれらの特に難治性の高い高悪性度のがんによる合併症を治療する新たな方法を明らかにする可能性がある。稀な場合であるが、がん細胞は脳脊髄液(CSF)で満たされた中枢神経系の比較的孤立した空間に浸潤し、脳と脊髄の内側を覆っている軟髄膜に転移することがある。栄養素と酸素がなく、警戒している免疫細胞が大量に存在するCSFは、外部からの侵入者にとっては敵対的な環境である。しかし、何らかの方法でがん細胞はこの存在しにくい環境において生存し、増殖する。がん細胞がこのような厳しい条件を克服する方法を調べるため、Yudan ChiらはシングルセルRNAシークエンシングを用いて、LM患者5例から得たCSFサンプルを検討した。著者らは、これらの細胞が親和性の高い鉄収集システムを利用していることを発見した。CSF中では、鉄の存在は限られているが、細胞代謝およびDNA合成のために不可欠なものとして必要性の高いリソースである。鉄捕捉遺伝子を発現しているがん細胞は、より効率的に鉄を集めることができ、この重要なリソースの捕捉能力がCSF内の健康なマクロファージよりも高い。このようなメカニズムによって、LM細胞は栄養素が少ない環境内で生存できるようになる一方で、マクロファージにとって必要な鉄の供給を減らすことで免疫系の攻撃を回避している可能性がある。「軟髄膜転移患者におけるCSFの生化学的構成に焦点を当てた研究はほとんどなく、Chiらの研究はこうした知識のギャップを埋めることに貢献している」と、関連するPerspectiveでLivia GarziaとMichael Taylorは記している。

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