News Release

将来の心臓発作のリスクが増大!

- 冠動脈硬化部位の冠攣縮に要注意 -

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

Spasm

image: This image shows a spasm at the site of organic stenosis. view more 

Credit: Dr. Koichi Kaikita

このニュースリリースには、英語で提供されています。

熊本大学大学院生命科学研究部 循環器内科学(小川久雄教授)の石井正将医師、海北幸一講師らは、日本人に多い狭心症※1である、冠攣縮性狭心症患者において、冠動脈狭窄 (プラーク)部位に冠攣縮※2が起こる患者では、将来、心臓発作の発症が増加することを、過去20年間の熊本大学循環器内科のデータをもとに解析を行い明らかにしました。  

冠攣縮は、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心臓病の原因の一つです。本成果は、冠動脈の狭窄部位と冠攣縮が起こる部位の関係を詳細に研究することによって、将来の心臓発作の予測や適切な薬物治療に役立つ可能性を示しています。  

本研究成果は、文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて、科学雑誌「The Journal of the American College of Cardiology」オンライン版に米国(EDT)時間の2015年8月31日(月)14:00【日本時間の9月1日(火)3:00】に掲載されます。

※1 狭心症
冠動脈が動脈硬化やけいれんを起こすことによって狭くなり心臓が酸素不足に陥ることで、胸痛等が起こる。

※2 冠攣縮
冠動脈のけいれん(過度な収縮反応)のことである。狭心症の約4割に冠攣縮が関与しているといわれ、突然死を起こす事もある。日本人の冠攣縮性狭心症は欧米人に比べて多いといわれていることからも、早期の診断が大切である。
論文名
Acetylcholine-provoked coronary spasm at site of significant organic stenosis predicts poor prognosis in patients with coronary vasospastic angina

著者名(*責任著者)
Masanobu Ishii, Koichi Kaikita*, Koji Sato, Tomoko Tanaka, Koichi Sugamura, Kenji Sakamoto, Yasuhiro Izumiya, Eiichiro Yamamoto, Kenichi Tsujita, Megumi Yamamuro, Sunao Kojima, Hirofumi Soejima, Seiji Hokimoto, Kunihiko Matsui, Hisao Ogawa.

掲載雑誌
The Journal of the American College of Cardiology

(説明)

冠攣縮性狭心症は、適切な薬物治療により急性冠症候群※3の発症や進行を抑えることができ、予後は比較的良好です。ただし、冠動脈狭窄(冠動脈が狭くなる状態)が併せて起きている例では、心臓発作を起こすケースが増加することが報告されています。しかしながら、冠攣縮が、冠動脈の狭くなっている部位、あるいは別の部位で起きている症例で、攣縮と動脈硬化の位置関係を詳細に研究調査した報告はありませんでした。

当科では、1,760症例のデータをもとに、冠動脈の動脈硬化による狭窄部位に冠攣縮が生じる患者群とそれ以外の患者群に分け、臨床的な特徴やその後の予後について調査しました。これらの症例データは、1991年から2010年までの20年間に、安静時に起きる胸の痛み※4の原因を精査するために、心臓カテーテル検査時に冠攣縮薬物誘発負荷試験(アセチルコリン負荷試験※5)を受けた患者の症例データの一部です。

調査した結果、1,760例のうち、冠攣縮は873例、冠動脈の動脈硬化による狭窄は358例に認められました。冠攣縮と狭窄とを併せ持つ症例は233例あり、狭窄のみの症例よりも若年で、糖尿病患者が少ない傾向が見られました。一方で、狭窄がなく冠攣縮のみが起こった症例は、狭窄および冠攣縮がない症例よりも高齢で、脂質異常や虚血性心疾患の家族歴が多く見られました。

狭窄部位に冠攣縮が生じる群は、狭窄部位に冠攣縮が生じる群は、狭窄がなく冠攣縮を生じる群や狭窄以外の部位に冠攣縮が生じる群に比べて、5年間における心臓発作の発症が多いことがわかりました。また、狭窄部位に起こる冠攣縮は、急性冠症候群などの心臓発作を発症する予測因子であることが明らかになりました。

本研究の結果から、「冠動脈の狭くなった部位に冠攣縮が生じると、将来的な心臓発作の発症リスクが高いことが示されました(図1)。以上より、冠動脈の狭窄部位で冠攣縮が起きるかどうかを検査することは、将来の心臓発作を起こすリスクのある人を予見し、十分な治療を施すために有用である」と結論しました。

※3 急性冠症候群
冠動脈がふさがることにより起きる突然死、急性心筋梗塞、不安定狭心症などの心臓病。

※4 安静時に起きる胸の痛み
冠攣縮性の狭心症は、安静時の胸の痛みが主要な症状である。

※5 アセチルコリン負荷試験
心臓カテーテル検査の一つで、薬剤(アセチルコリン)を冠動脈内に注入し、冠動脈がけいれんするかどうかで冠攣縮性狭心症を診断する試験。

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