フロリダ州住民と戸別訪問で簡単な会話をすると有権者のトランジェンダーに対する考え方が目に見えて変化したことが、新しい研究で明らかになった。戸別訪問によって達成されたこの効果で、トランスジェンダーを差別から守る法律への支持も上がった。これらの効果はトランスジェンダーと非トランスジェンダーによる戸別訪問で同様に達成されたもので、この考え方の変化は1998~2012年のアメリカのゲイとレスビアンに対する考え方の変化よりも大きいと本論文の著者は述べている。今までに実証的研究によって、持続的に偏見を軽減することは困難で、何ヵ月にもわたる真剣な介入が必要であることが判明している。実験室実験でメッセージに対する個人の考え方を永続的に変えるには、他者の観点からメッセージを考えることでそのメッセージの処理に一生懸命になるという能動的処理と呼ばれる理論が提示されている。ここで、そのような介入行為によって現実社会で永続的に偏見が軽減するかどうかを調査するため、David BroockmanとJoshua KallaはロサンゼルスLGBTセンターと南フロリダで最も長くサービスを提供している最大のLGBT組織による戸別訪問の結果を評価した。2015年の夏、ボランティア訪問員とこれら組織のスタッフである訪問員が ―― どちらも経験豊か ―― フロリダ州マイアミで戸別訪問を行い、住民と10~15分会話した。各家での訪問はロサンゼルスLGBTセンターの開発したアプローチの方法に従って行われた。この方法には能動的処理を促進することが以前から示されている策が盛り込まれている。たとえば、参加者に多数派とは違う対応をされた経験を振り返ってもらうなどである。
これらの会話の効果を評価するために、BroockmanとKallaは参加者に他の問題に対する考え方とともにトランスジェンダーに対する考え方も尋ね、戸別訪問の前と後で参加者を調査した。戸別訪問での会話の3日後、3週間後、6週間後、3ヵ月後に追跡調査を実施し、この会話で有権者10人中約1人のトランスジェンダーに対する考え方が変わったことをBroockmanとKallaは発見した。また、この会話が広く効果的であることも分かった。民主党支持の有権者および共和党支持の有権者、女性有権者および男性有権者、白人有権者、ラテン系有権者、アフリカ系有権者のすべてに大きな変化が見られた。この結果は、標準的な電話や戸別訪問による偏見の軽減を目指した従来の試みの結果として発表された他の測定値とは対照的で、ロサンゼルスLGBTセンターなどの組織には大いに有益だと思われる。PerspectiveではElizabeth Paluckがさらなる見解を述べている。
注:BroockmanとKallaはPeter Aronowとともに、今は取り下げとなっている2014年12月発行のScienceに掲載されたMichael LaCourとDonald Greenによる論文の不正データを暴露した研究者である。この研究は同性間結婚に対する考え方を変えるロサンゼルスLGBTセンターの能力の調査とはいえ、このセンターの草の根的な戸別訪問という方法の効果を調査することも目的であった。
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