粂田昌宏 生命科学研究科助教、吉村成弘 同准教授らの研究グループは、可聴域の音に対して細胞レベルで遺伝子応答が起こることを示しました。生命と音との根本的な関係の解明が期待されます。本研究成果は、2018年2月1日午前4時にオンライン学術雑誌「PLOS ONE」に掲載されました。
音は、人をはじめとする動物個体にとって、外界の認識やコミュニケーションのツールとして非常に重要な役割を果たします。その個体レベルでの重要性は誰もが認めるものであるのに対し、細胞レベルで音を認識する仕組みがあるかどうかについては、これまでに科学的な検証がほとんどなされていませんでした。
そこで本研究では、可聴域音波が細胞レベルでの応答を引き起こすかどうかを、細胞の遺伝子応答に着目して追究しました。様々な種類の細胞に様々な音波を当て遺伝子解析を行ったところ、細胞によっては特定の遺伝子群のはたらきが抑制されることや、その応答レベルには音の大きさや波形などの特徴が大きく影響することを明らかにしました。中には抑制応答が見られない種類の細胞もあることから、分化など細胞の状態によって、音に対する応答の仕方が異なると考えられます。今後、さまざまな実験を通して検証を進めることで、細胞が持つ音波に応答する仕組みを明らかにするとともに、音が生命に与えうる影響を多角的に考察していきます。
これまで音(可聴域音波)は、耳などの感覚器によって受容され、脳によって統合解釈されることで、はじめて生命にとって意味のある情報になるものと捉えられてきました。本研究では、この「常識」にチャレンジし、音が直接細胞に作用して遺伝子応答を引き起こすことを示す結果を得ています。今後も、生命にとって音とは何なのか、独自の切り口から考えていきます。
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Journal
PLOS ONE