News Release

オスのプレーリーハタネズミは「浮気」を記憶力不足のせいにできるか?

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

交尾相手を探して広い行動範囲をもつオスのプレーリーハタネズミは、他のオスと出くわして争いになった場所をよく記憶しているため、巣の近くに留まって貞節を守るオスのハタネズミと比べて、空間記憶に乏しいことが、新たな研究によって示された。この研究から、一部のプレーリーハタネズミが示す「浮気」の行動は、遺伝性の遺伝子発現に関係している可能性が示唆される。北米のプレーリーハタネズミのほとんどは一夫一婦制で、決まったメスとつがいを作って共同で子供を育てる。しかし、ヒトの場合と異なり、時に「浮気」が発生し、行動圏の外に出ていくオスは興味深いジレンマに直面する。そうしたオスは、メスと交尾して自分の遺伝子を伝える可能性がある一方、パートナーを守ろうとして攻撃してくるオスと出くわすリスクも高まる。「浮気」が遺伝子レベルで及ぼす影響を解明するため、Mariam Okhovatらはavpr1aという遺伝子の発現を詳細に調べた。この遺伝子は、オスの性的な貞節を予測し、空間記憶回路に関与することが良く知られている。この遺伝子に関係する受容体V1aRの特定脳領域における発現低下は、他のオスとの攻撃的なやりとりが起きた場所に対する記憶の低下と関連しており、このことが行動圏の外をうろつくこと(そしてパートナーのいないメスと接触すること)につながる。これに対して、V1aRの発現が多いことは、過去にオスと出くわして争いになった場所の空間記憶が良いことと関係し、行動圏の外をうろつくことが少なくなる。研究者らは実験を繰り返し、avpr1aの発現に影響する4つの一塩基多型(SNP)を特定し、性行動に関係するavpr1a遺伝子の様々な部位に、レベルの異なるメチル化が生じていることを発見した。遺伝子発現を亢進させるこれらのメチル化部位は遺伝性であり、異なる個体群において明確なパターンを示す。研究者らの示唆するところによれば、実験室の個体群と野生の個体群の間にある遺伝子レベルの差異により、個体群密度が高いと遺伝子変異が生じやすくなり、結果としてV1aR発現が低下して空間記憶も低下し、行動圏が広がってオスにとって交尾の機会が増えるのに対して、個体群密度が低いと逆の結果となるという。Gene RobinsonによるPerspectiveでは、これらの所見について詳細に掘り下げて論じている。

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