2組の研究において、STING(インターフェロン遺伝子の刺激因子)に対するアゴニストとして安定した分子療法薬が開発され、マウスにおいて抗腫瘍免疫応答が誘導されることが報告された。両研究の結果を合わせると、将来のがん治療薬および免疫療法戦略にとって、臨床的に有効なSTINGアゴニストに向けての進歩を示すものである。天然のSTING免疫経路の天然アゴニストによる活性化は、抗腫瘍免疫において重要な役割を果たすことがこれまでに示されており、この経路はがん治療に用いることのできる魅力的な標的とされていた。STING経路を標的とする合成アゴニストの投与は、新たな抗腫瘍免疫応答の誘導に役立ち、これにより腫瘍増殖を制御したり、PD-1阻害免疫療法などのがん治療の成績を高めたりできることが示唆されている。しかし、創薬におけるSTINGアゴニストの開発は難しく、利用する分子が不安定であることによって主として制限されている。今回Emily ChinらとBo-Sheng Panらはそれぞれ、前臨床がんモデルにおいて抗腫瘍活性を示す、安定なSTINGアゴニストを開発したと報告している。Chinらは、SR-717という安定な非ヌクレオチド低分子のSTINGアゴニストが、天然のSTINGリガンドであるcGAMPと同様に作用することを報告した。著者らによれば、SR-717は悪性黒色腫のマウスモデルで頑健な抗腫瘍活性を示した。これらの結果を受けて、Panらは経口製剤によってSTING免疫経路を薬理学的に活性化することができるアゴニストを開発した。マウスモデルにこれを投与したところ、腫瘍退縮をもたらし、チェックポイント阻害薬療法を増強することができると分かった。「非ヌクレオチド低分子であり、全身投与が可能なSTINGアゴニストは、STING経路を標的とする魅力的なアプローチとなり得るものであり、最適化されて製剤化されれば、治療環境を変容させる可能性がある」と、関連するPerspectiveでThomas GajewskiとEmily Higgsは記している。
###
Journal
Science