ハサミムシの羽からヒントを得て科学者らは、折り畳み能力が極めて高い人工の羽をデザインした。従来の折り紙の折り畳み技術では、堅固さと折り畳みパターンの数に限りがあるのに対し、Jakob A. Faberらが開発した技術はこれらの課題を克服しており、新しい人工の羽のデザインへの道を拓くものである。通常の折り紙技術は、2次元構造を様々な形態に折り畳むために用いられている。折り紙技術は最近、折り目の屈曲能力を高めることで改善されてきた一方、折り畳みパターンのデザインスペースは変わらないままである。しかしハサミムシの羽には、折り紙ではみられない折り畳みパターンが認められる。これは、安定性を維持しながら「禁じられた範囲」に及ぶ角運動を可能にする、ある種の特徴があるためである。このような羽の能力は、レシリンという物質に依っている。レシリンは、伸縮性のあるバイオポリマーの一種で、羽全体に分布することによって、回転性および伸長性のある、特別な弾性を可能にする。レシリンのおかげで、羽が折り畳まれる前に溜め込んだ機械的エネルギーなしに、折り畳まれた位置から飛び出すことができる。今回この研究者らは初めてハサミムシの羽を分析し、機械的弾性を用いてそのデザインを模倣することで、必要となる回旋と折り畳みの運動を解明しようとした。こうして得られた洞察に基づいて著者らは、最初閉じられていた状態から開いた形になるように4Dプリントされた「羽」となる、事前にプログラムされた折り畳みデザインを開発した。分析の結果、閉じられた状態から開いた状態に飛び出す動きは80ミリ秒のスピードであることがわかり、これは通常の拡散に基づくメカニズムより大幅に速く、ハエトリグサが獲物のハエを捕えるスピードとほぼ等しい。
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