研究者らは、ミバエにおいて睡眠不足や感染症の後に睡眠を促進する抗菌ペプチドを発見したと、新たな研究で報告されている。「眠り」という日本語にちなんで名付けられた蛋白質NEMURI(NUR)は、睡眠不足により誘導され、また今回の研究結果によれば、病気からの回復期など睡眠が必要となる状況で特に重要な役割を果たす可能性があり、これは睡眠と免疫機能の関連を示している。我々は人生の大部分を眠って過ごしているにもかかわらず、我々がなぜ眠るのか、また眠気を感じさせるメカニズムについてはほとんど分かっていない。これまでの研究から、覚醒状態にあることは神経系において睡眠促進シグナルの増大を促し、眠気を累積的に高めることが示唆されている。さらに、このような眠気は体調が悪い時にも高まることが認められている。しかし、睡眠不足により疲労することと体調が悪いこととの間に関係があるのかについてはいまだに不明である。Hirofumi Todaらは、12,000匹ものショウジョウバエの遺伝子スクリーニングを実施し、過剰発現されると一貫して睡眠量を増やす単一遺伝子を発見した。Todaらによれば、このnemuri(nur)遺伝子は睡眠を促進するNURペプチドをコードしており、ショウジョウバエにおける先天的な恒常性維持の必要性に関わっている。この遺伝子が過剰発現されるとショウジョウバエの眠気が高まり、このnurが変異したショウジョウバエは覚醒しやすくなり、眠ることが困難になる。さらに、このnurは睡眠を促進するだけでなく、細菌感染に対するショウジョウバエの生存能を高めることが示された。この研究から、脳内のニューロンから分泌されるNURペプチドが、二重の目的、すなわち睡眠の促進と細菌の殺滅という二つの目的を担っていることが示され、これによりNURは病気やストレスによって誘導される睡眠を引き起こす上で重要であることが示唆される。著者らによれば、病気の時の睡眠は生存を高めるため、NURによる睡眠の促進はその免疫関連機能と密接に結びついているという。「感染症の時に睡眠の増加が何らかの形で保護作用を有すると考えることは、非常に魅力的である」と、関連するPerspectiveでGrigorios OikonomouとDavid Proberは記している。「この結果は、夜間に良い睡眠をとることが回復作用をもつという一般的な経験と一致する…」
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