使いやすいナノサイズ構造体のデザイン可能性を広げるため、研究者らは、指示に応じて折り畳んで、これまでにないスケールで望む形態を作ることのできる一本鎖DNAおよびRNAをデザインした。この一本鎖分子の発明は、より一般的な二本鎖分子(短い「ステープル」鎖が、非常に長い鎖を折り畳んで形を作る)と比べて、ナノテクノロジーにおける費用効率、大規模生産、および形状変化ポリマーの適応性に大幅な向上をもたらす可能性がある。生物学の世界では、情報伝達能と自己折り畳み能を有する分子の例はたくさんあり、例えば構造を変えて様々な形態をつくり新たな機能を獲得する蛋白質などがそうである。生物学に倣ってそうした分子を人工的に構築する取り組みは、相補的塩基対を用いて自己折り畳みを行う多鎖DNAおよびRNAにより示されているが、一本鎖DNAまたはRNA(折り畳み運動の促進を助ける相補鎖を持たない)を用いた大きな分子形態をデザインする取り組みの進歩は限られていた。今回Dongran Hanらは、より複雑でプログラム可能、複製可能な、結び目のない自己折り畳み能をもつ一本鎖DNAおよびRNAを作製するという課題に挑戦して、折り畳みによって18種類の構造体(ひし形、長方形、正方形、笑顔マークやハート形)を使いやすいソフトウェアツールでプログラムして作成できるkbの大きいDNAまたはRNAによる一本鎖折り紙を報告した。この一本鎖折り紙は、10,682 ntの一本鎖DNA(これまでに作製された最大の一本鎖DNA構造体の 37倍の大きさ)および6,000 ntの一本鎖RNA(これまでの一本鎖RNA構造体の10倍の大きさ)という大きな形態をスムーズに自己折り畳みにより作成できる。同様に、大腸菌などの生きた細胞内で一本鎖折り紙の様々な形態をクローンおよび増幅することに成功し、ナノ構造体の商業生産に向けた安価かつ大規模な生産戦略となることを示した。
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