自然界にあるものとよく似た材料を用いて、研究者らは、合成の真珠層(真珠母ともいう)を作り出すことに成功した。真珠層とは、真珠コーティングや一部の軟体動物の殻の内側に見られる光沢のある物質である。非常に強くて丈夫なため、合成材料として魅力的だが、多面的で複雑な構造をしている。現行の合成方法では、込み入った層化と手順が必要なうえに、高い温度も必要なので、使用できる材料の種類が限られている。自然界では、真珠層は足場となる有機マトリックスを用いて作られる。マトリックス上で、板状のアラゴナイトが鉱化過程によって成長して互いに食い込み、れんがとモルタルのようになっている。今回、Li-Bo Maoらは同様のマトリックスを設計し、鉱物と添加剤がマトリックスに絶え間なく供給されるようなシステム下に置いた。このシステムでは、炭酸カルシウムがマトリックスに徐々に沈殿して重炭酸を蓄積し、全面的にはり付くようなことはない。そのため、ミネラルがゆっくり沈殿し、真珠層がより均一に、より自然に近いかたちで形成される。最終合成生成物を分析した結果、本物の真珠層よりもわずかに密度が低いことが明らかになった。そのうえ、小板状のアラゴナイトのサイズがわずかに大きく、部分的に飛び出しているため、合成真珠層はひび割れに対する耐性がわずかに弱い。だがいずれにせよ、この合成材料は自然物とほぼ同等の力学的性質を保持している。著者らは、この人工的な鉱化方法を拡張することで、特異な性質をもった他の材料も作れるだろうと期待している。
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