News Release

神経心理学的疾患リスクをもたらす脳構造に光をあてる: PsychENCODEからの10件の最新報告

Integrative functional genomic analysis of human brain development and neuropsychiatric risks

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

経心理学的疾患の原因は、数百もの遺伝子が関与する極めて複雑なものであり、こうした特徴のために必要な治療法の開発は進んでいない。神経心理学的疾患の基礎にある遺伝子変異の多くはゲノムの非コード領域に存在し、遺伝子バリアントと疾患転帰との関係を明確に確立することは特に難しい。今回、PsychENCODE Consortiumから10件の報告が公表された。このコンソーシアムは2015年に確立された多分野共同の取り組みで、統合失調症、双極性障害および自閉症スペクトラム障害の基礎にある分子機序を明らかにすることを目的としている。今回発表された10件の報告は、これらの疾患に関連する脳構造の解明における進展を示している。これらの研究はScience(7件)、Science Translational Medicine(2件)およびScience Advances(1件)に発表されており、以下にその内容の概要を述べる。

Scienceに発表された最も重要な研究において、Mingfeng Liらは脳の経時的な発達について分析している。著者らは複数のゲノム技術を適用して、脳の発達の経過を通じて、様々な脳領域および細胞種における遺伝子発現プロファイルや、エピジェネティックな修飾および調節を行う要素を明らかにすることを試みた。著者らの報告によれば、神経心理学的疾患のリスクと関連する遺伝子発現における最も重要な差異は、早期の脳発達時および思春期に最も顕著にみられるという。これに次いで重要な所見は、神経心理学的疾患のリスク遺伝子は特定の細胞種と脳発達の時点に集中してみられるというもので、この所見は、これらの疾患機序についてどの時点でどの部位を調べるべきか、またいかにモデル化するかに関する新たな洞察をもたらしている。第二の重要な研究もScience, に掲載されたもので、約2,000人から得られた脳組織および単一細胞(シングルセル)のデータを統合して、疾患リスクの予測にディープラーニング手法を適用している。この研究でDaifeng Wangらは、シングルセルシークエンシングを用いて、興奮性ニューロンや抑制性ニューロンなどの基本的な細胞種について、神経心理学的疾患と関連する差異を説明しようとした。著者らは大規模なデータを用いることで、DNAの非コード領域に存在するバリアントを特定の遺伝子と関係づける分子レベルの制御ネットワークを構築することができた。次いで、著者らはこれらのネットワークを用いて、これまで研究者が行ってきたよりも多くの既知の神経心理学的疾患リスクバリアントを遺伝子と関係づけることに成功した。こうしてWangらは、構築した制御ネットワークを解釈可能なディープラーニングのフレームワークに組み込んで、神経心理学的疾患リスクの予測を行った。著者らが行った予測は、従来の遺伝子研究に基づくものよりもはるかに性能が高かった、と著者らは報告している。

Science Translational Medicineに発表された2件の研究ではそれぞれ、統合失調症および双極性障害に関係する脳内の遺伝子活性化における特有のパターンが同定されている。これらの所見により、統合失調症および双極性障害に対する今後の創薬の取り組みが促進される可能性がある。両疾患にはそれぞれ、世界中で数千万人の患者がいて、巨額の経済的負担となっており、ある分析によれば2013年の米国において、統合失調症により総額で1,550億ドルもの費用がかかっていると推定された。

そしてScience Advancesに発表されたSuhn Rhieらの研究は、神経細胞のサブセットについて三次元のエピゲノムマップを作成した初の研究で、統合失調症における神経発達の要素に関するエピジェネティック研究にとって優れたモデルを提供するものである。著者らは、統合失調症の診断を受けた患者および健康対照者から生検により採取した神経細胞の評価を行い、制御要素においてエピジェネティックな特徴に個人差があることを明らかにした。この結果は、統合失調症に対する薬物介入にとって新たな標的となる可能性がある、と著者らは述べている。

これらの研究論文について、PsychENCODE Consortiumは研究者にとってリソースとなるような分析的および生物学的ツールを開発した。全てのデータおよび関連する解析結果は、このコンソーシアムのウェブサイト(psychencode.org)で閲覧可能である。これら一連の研究論文は、PsychENCODE Consortiumの立案責任者でありそのリーダーであるPamela Sklarに献じられている。

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