News Release

「取り繕い反応」はアルツハイマー病の特徴的なコミュニケーションのパターン

Peer-Reviewed Publication

Kumamoto University

認知症の4タイプにおける取り繕い反応の比較

image: "Saving appearance responses" (SARs) are often associated with dementia, particularly AD. MCI: mild cognitive impairment, AD: Alzheimer's disease, Mixed Dementia: AD mixed cerebrovascular disease, DLB: Lewy bodies. Image from "Matsushita et al." and is licensed under CC BY 4.0 view more 

Credit: Dr. Masateru Matsushita

認知症は思考力や判断力などが失われてしまう辛い病気です。認知症の方にはしばしば正しい答えをさも知っているかのように取り繕ってしまう行動が見られ、病状の進行発見が遅れたり、ケアする人々をいらだたせたり怒らせてしまったりするケースがよくあります。この取り繕ってしまう行動は「取り繕い反応」と呼ばれており、今回、熊本大学の研究グループは、認知症の型ごとに見られる取り繕い反応を初めて統計的に調査しました。調査結果により、アルツハイマー病患者では特にこの取り繕い反応がよく見られることが明らかになりました。アルツハイマー病患者をケアする方々は取り繕い反応について注意深く観察することが期待されます。

認知症の方では、記憶障害により社会生活上様々な問題が起きているにもかかわらず、上手に相手に話をあわせて、忘れてしまったことを憶えているかのように振る舞う態度がみられることがあります。このようなコミュニケーションのあり方(取り繕い反応)は、認知症の治療やケアに関わる方々のあいだでは、とても良く知られた反応のひとつです。これまでに、取り繕い反応に関して数多く記述されていましたが、それらの報告のほとんどは医師や看護師、臨床心理士などの経験や印象に基づくもので、実証的データに乏しいものでした。

今回、熊本大学の研究者らは、認知症の原因となる4つの病態、アルツハイマー病(107名)、脳血管障害を有するアルツハイマー病(16名)、レビー小体型認知症(30名)、軽度認知機能障害(55名)において、認知機能検査の際にみられる取り繕い反応を、先行研究の定義に基づいて評価し、その出現頻度を比較しました。その結果、アルツハイマー病では、実に半数以上の方に取り繕い反応がみられ、レビー小体型認知症や軽度認知機能障害の方と比較して統計的有意に多くみられることが明らかになりました。性別や推定罹病期間、認知機能と前頭葉の機能に関する検査の結果を統計的に調整して取り繕い反応を比較した結果、アルツハイマー病では、レビー小体型認知症の4.24倍、軽度認知機能障害の3.48倍、取り繕い反応がみられることがわかりました。

研究を主導した松下正輝特任助教は次のようにコメントしています。

「取り繕い反応は、認知症になった自分を何とかしてよく見せようとする行動であり、そこにはさまざまな心理的葛藤が関与していると思われます。アルツハイマーで取り繕い反応が多く見られるのには、脳の記憶機能が落ちる一方で思考や判断力は損なわれにくいためかもしれません。アルツハイマーでは特に取り繕い反応が出やすいという特徴を周囲が理解して配慮し、早期発見やよりよい医療ケアに繋がることを期待します。」

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本研究成果は、科学ジャーナル「PLOS ONE」に平成30年5月24日に掲載されました。

[Source]

Matsushita M, Yatabe Y, Koyama A, Katsuya A, Ijichi D, Miyagawa Y, et al. (2018) Are saving appearance responses typical communication patterns in Alzheimer's disease? PLoS ONE 13(5): e0197468. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0197468


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