日本の宇宙機関の探査機「はやぶさ2」は、サンプル採取のためにリュウグウ(おもに地球と火星の間の軌道を公転する地球近傍小惑星)に短時間着陸した際に、高解像度の画像と映像を撮影した。新しい報告によると、その画像や映像によって、岩の多い表面を詳しく調べることが可能になったという。はやぶさ2は着陸中に採取した小惑星のサンプルを、2020年12月に地球に持ち帰る予定である。着陸中にリュウグウ表面を新たに詳しく観測できたことによって、この小惑星の年齢や地質学的歴史を理解する手がかりが得られた。そして、表面の色にばらつきがあるのは、以前太陽に近い軌道を一時的に通過した際に、急激に太陽に熱せられたことが原因らしいと示唆された。着陸目標地点を選ぶために数ヵ月にわたり周回しながら観測を続け、ついに2019年2月22日、はやぶさ2はリュウグウ表面に降下し、炭素質の小惑星から表面物質を回収して、初のサンプル採取に成功した。はやぶさ2による前回の観測で、リュウグウ表面は2種類の物質(赤っぽいものと、青っぽいもの)から成ることが明らかになっていた。しかし、こうした色の違いを生む原因は不明だった。はやぶさ2は着陸する際に、搭載カメラで着陸地点周辺の表面を非常に詳細に高解像度撮影した。そこにはサンプル採取によって飛散した岩石も写っていた。諸田智克らはこれらの画像を利用して、リュウグウ表面の地質や進化について調べた。思いがけないことに、諸田らははやぶさ2のスラスタ(姿勢制御などを行う小型ロケットエンジン)によって、表面を覆う粒子の細かい黒っぽい物質が飛散する様子を観測した。この物質は表面の赤っぽい物質と同じものだと思われた。これらの研究結果を小惑星のクレーターの層序に関連づけることによって、著者らは、表面が赤くなったのは短期間太陽に激しく熱せられたことが原因だと結論付けた。これは、リュウグウの軌道が一時的に太陽に近づいたとすれば、説明がつくという。
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