患者が不良な転帰につながる診断の遅れに直面することの多い、発展途上地域で使用するためにデザインされた、迅速で手頃な乳癌検査が開発された。この診断法は、患者68名から成る小グループで試験したときの初期精度は100%であり、1時間未満で繰り返し結果が得られた。大規模な患者群でさらに試験する必要があるが、この技術のスピードと使いやすさにより、リソースが限られた状況で、臨床家が迅速な癌診断への障壁を克服するうえで役立つ可能性がある。癌の早期発見は、先進国でも困難であるが、死亡例の3分の2以上が癌によって生じている低・中所得国ではさらに困難になり得る。医療インフラとヘルスケア専門家が不足しているため、診断は数ヵ月遅れることがあり、患者が進行疾患となってから初めて診断されることも多い。新しい癌検査の必要性に対処するため、Jouha Minらは、イメージサイトメトリー(個々の細胞の悪性度をイメージングして解析する技術)を利用した。細針吸引(標準的な生検に代わる侵襲性の低い方法)によって採取した乳房細胞を調べる、CytoPANと名付けたコンパクトな自動化サイトメトリー検査を開発したのである。韓国で行ったバリデーション研究で、CytoPANは乳癌患者68例中63例に使用でき、試料中のわずか50個の細胞を使って癌を精度100%で発見できた。この検査は重要な癌バイオマーカーであるER/PRとHER2も検出でき、精度はそれぞれ、93%および96%であった。この方法の使いやすさと手頃さにはいくつかの特徴がある。 結果がすみやかに得られ、必要なトレーニングが少ない単純化したワークフローを組み込んでおり、検査キットの経費はわずか5ドルで現在の診断法よりも5倍以上安価である。Minらは、今後の試験では、幅広いバイオマーカーを用い、乳癌女性がHIV感染などの追加のリスクに直面しているサハラ以南のアフリカなどの他の地域でCytoPANを試験すべきだと述べている。
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Journal
Science Translational Medicine