今回の報告によると、葉の大きさの世界的なパターンについて総合的に解析した結果、緯度が低いほど植物の葉が大きいのはなぜかという植物生態学の分野で最も長きにわたって疑問であった問題の1つに解答が得られたという。この研究結果は光合成中の葉の温度と水の利用が重要な役割を担っている「次世代」植生モデルに影響すると考えられる。葉の大きさにはかなりのばらつきがあり、世界の植物種の間でその大きさの違いは100,000倍以上にも及ぶ。赤道に近い熱帯環境が大きな葉を持つ多数の植物種の生育地であることは明白な事実であるが、最も大きい葉に見られる「緯度勾配」(19世紀後半に発見されたパターン)は十分に定量化されておらず、その根本にある気候的要因についても不明な部分が多い。さらに、葉のエネルギーバランスのモデルでは熱く乾燥した地域の巨大な葉を持つ植物にはかなりのデメリットがあることが示されているが、熱帯地域に成育する植物の明らかに順調な進化は上手く説明できていない。Ian Wrightらは今回、(葉とその周辺の間のエネルギーの流れを説明する)そのエネルギーバランスモデルによる予測が地球上の特定の地域に限って実証される仕組みをより深く理解するために、世界各地の682ヶ所で7,670種の葉のパターンを研究した。Wrightらは簡単なモデルを開発し、それにより葉から大気への日中対夜間の温度の変化が葉の大きさの地理的勾配の重要な決定要因であることを明らかにした。Wrightらによると、この研究結果は気候の変化に対する考えられる反応についての新しいヒントとなり、それは予測モデリングに利用できるという。さらに、葉の大きさは水と炭素の流動への影響を通して生態系の機能に重大な影響を及ぼすという。
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