新しい研究によると、地球の大気が酸素で満たされるかなり前に、細菌は酸素に適応していた可能性があるという。機械学習などを用いて数十億年にわたり微生物の進化をたどった研究者らは、酸素耐性の進化が、大酸化イベント(GOE)以前から存在していたこと、およびシアノバクテリアによる酸素発生型光合成の起源にとっても、地球大気の進化にとっても重要だった可能性があることを明らかにした。この研究結果によって、生物進化と地球の地質学的歴史との間に動的関係があることが浮き彫りになった。微生物は、少なくとも37億年間、地球の歴史を支配してきた。しかし、地球初期の生命体は化石記録(特に古い地質年代のもの)にわずかしか存在しないため、その進化についてはほとんど分かっていない。そこで、化石証拠の代わりに微生物による生物活動の地球化学的記録を用いて、主要な細菌系統の年代とその代謝変化について推定が行われている。約24億年前のGOEによって、大気中に酸素が蓄積していった。地球を一変させるこの事象は、酸素発生型光合成の出現によって引き起こされたと考えられている。酸素発生型光合成は、約32億2000万年前に現れたとされるシアノバクテリアによる進化上の革新である。この革新はGOE以前に起きたにもかかわらず、GOEによって大気中酸素濃度が上昇し始めるまで、ほとんどの生物は依然として嫌気的だったと考えられている。GOE以前に好気性生物がどの程度存在したかについては議論が続いており、酸素に適応した細菌系統の進化的タイムラインは今もなお十分に制約されていない。
この空白を埋めるため、Adrián Davínらは、細菌分類体系にまたがる1007のゲノムを用いて、細菌の種系統樹を作成した。次にDavínらは、機械学習と系統学的調停を用いて、細菌ゲノムにおける酸素適応の明確な進化的痕跡を確認し、嫌気的ライフスタイルから好気的ライフスタイルへ祖先が移行した系統を予想した。これにより、著者らは細菌における酸素使用の進化を太古までたどれるようになった。この研究結果によれば、初期の好気性細菌はGOEの前(約32億2000万年前~32億5000万年前)に出現し、酸素発生型光合成が出現する前に、いくつかの系統(おそらくシアノバクテリアの祖先)において好気的代謝が進化したと考えられるという。GOEの後、好気的代謝は著しく多様化し、嫌気的代謝と比べて酸素に適応した系統の多様化率が高くなったのである。
Journal
Science
Article Title
A geological timescale for bacterial evolution and oxygen adaptation
Article Publication Date
4-Apr-2025