image: 図1.特定部位への光刺激と多点での神経活動記録を同時に行える マイクロLEDと神経電極を統合したハイブリッドプローブ view more
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<概要>
豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系の関口寛人准教授、電気・電子情報工学専攻の博士前期課程 篠原豪太氏と東北大学大学院薬学研究科の佐々木拓哉教授、鹿山将特任研究員らは、生体組織深部において高精度に神経活動を制御し、多点で神経活動を同時記録することを可能とするマイクロLEDと神経電極を一体化したハイブリッドプローブを開発しました。
近年では、光遺伝学的手法(注1)を利用して、生体の外部から光のみを当てることで、神経細胞の活動を制御することが可能になっています。しかし、従来の光ファイバーを用いた手法では、単一の神経集団の制御に限られ、複数の領域を同時に精密に操作することが困難でした。また、光刺激のみでは神経ネットワークの情報処理や伝播の複雑なメカニズムを完全には解明できないため、誘発された神経活動を高解像度で計測する技術が求められていました。
今回、本研究グループは、独自の接合技術を用いて、光刺激と神経活動記録を同時に行えるよう多点マイクロLEDと神経電極をハイブリッド統合する神経科学プローブを開発しました。この新しいハイブリッドプローブを使用して、マウス脳内で光刺激が特定の神経活動を誘導する様子を高い空間・時間分解能で記録することに成功しました。本研究成果は、神経ネットワークの理解を飛躍的に進展させる可能性を秘めており、神経疾患の新たな治療法開発や、神経科学研究の革新につながることが期待されています。
本研究成果は、2025年2月6日(木)に「Applied Physics Express」にオンライン掲載されました。
<詳細>
現在、光感受性タンパク質の発現を利用して特定の神経活動を制御する光遺伝学的手法は、神経科学研究における強力なツールとして注目されています。しかし、従来の光ファイバーを用いた光刺激では、単一の神経集団の制御には適しているものの、複数の神経細胞群を同時かつ独立して操作することが難しいという課題がありました。
一方で、近年注目されているマイクロLEDを活用した多点光刺激デバイスにより、複数の神経細胞群を個別に制御することが可能となり、神経ネットワークの動態理解が飛躍的に進むと期待されています。また、光刺激のみでは神経ネットワークの情報処理や伝播メカニズムを完全には解明できないため、光刺激と神経活動記録を統合した技術が求められていました。
本研究では、生体深部において光刺激と神経活動記録を同時に行えるマイクロLEDと神経電極をハイブリッド統合した新しい針状デバイスを開発しました。マイクロLEDプローブは特定部位への光照射を可能にし、神経電極プローブは神経活動の電気信号を計測します。これらのプローブを独立に製造し、各プローブの位置を精密に調整して、Auマイクロバンプを介して高精度に接合する独自技術を開発しました。Auマイクロバンプの高度制御技術により、LEDと電極間のギャップを10マイクロメートル単位で調整し、高い空間分解能を達成しています。接合されたプローブの角度差は0.02°以下であり、優れた平行性によってマウス脳深部へのスムーズな刺入が可能です。さらに、6つのマイクロLEDと6つの神経電極を搭載したハイブリッドプローブをマウス脳に挿入し、特定部位への光照射とその周辺の神経活動の誘発・記録に成功しました。
Journal
Applied Physics Express
Method of Research
Experimental study
Subject of Research
Not applicable
Article Title
Hybrid probe combining MicroLED and neural electrode for precise neural modulation and multi-site recording
Article Publication Date
6-Feb-2025